買うべきなのは「事業」よりも「スピード」

 日通は全く新たな法人向けサービスにも、M&Aで挑戦している。2015年3月に豊田自動織機<6201 >から買収したワンビシアーカイブズがそれ。同社は官公庁や金融機関・医療機関などの極めて機密性が高い文書・データ保管事業を手がける。

ワンビシアーカイブズのサービスイメージ
ワンビシアーカイブズのサービスイメージ(同社ホームページより)

 2017年5月にはワンビシアーカイブズの文書保管や電子化の技術と、日通のセキュリティ輸送の機能を組み合わせ、高度なセキュリティーを要求される文書の輸送、保管、電子化、溶解処理を一括で受託する新サービス「スマートスキャニング」を立ち上げた。この他にも「知的所有権の塊」といわれる生体試料の保管・輸送、医薬開発関係資料を安全に保管する「GxP関連資料保存サービス」などの提供している。

日通のトラック
運送業者がモノだけを運ぶ時代は終わった(同社ホームページより)

 個人のプライバシーや知的所有権といった情報の秘匿性に対するニーズは高まる一方だ。物流会社が運び、保管する対象も「モノ」から「情報」へ広がりつつある。情報という新しい商品を取り扱うには、これまでの自社の輸送ノウハウだけでは対応できない。とはいえ社内で一から始めるのでは、時間がかかりすぎる。物流の世界は日進月歩。わずかな出遅れが致命的な差になりかねない。日通はM&Aで迅速なサービス展開に挑む。これからもあっと驚く輸送の新サービスが、M&Aで生まれそうだ。

日本通運の主なM&A(2007年以降)

年月概要
2007.1 現地法人の臺灣日通國際物流股份有限公司(台湾日通)が、海運業務代理店で「立欧股份有限公司」(立欧社)から海運代理店事業を譲渡。併せて同社関連会社の「聯海通運股有限公司」の全株式を取得
2007.3物流・倉庫内作業の人材派遣などを手がける「シモムラビジネスワークス」の事業のうち、人材サービス事業を吸収分割して100%子会社化
2007.4インドの航空・海運業務代理店「J I Logistics Private Limited」発行済株式の51%を取得し、社名を「Nippon Express (India) Private Limited」(インド日通)に変更
2008.6日本郵便との宅配便事業統合の受け皿会社となる「JPエクスプレス」を設立
2010.7宅配便事業を日本郵便へ譲渡、8月にJPエクスプレスを解散。
2012.3現地法人の米国日本通運が、米国内・国際輸送業務、倉庫業務などを手がける中堅物流業者の米Associated Global Systems, Inc. (AGS)を買収
2012.10現地法人の香港日本通運が、アパレル、化粧品などの物流を手がけるAPC Asia Pacific Cargo (H.K.) Limited(APC)の全株式を取得
2013.1現地法人の欧州日本通運が、高級ファッションブランド関連のフォワーディング(物流手配)、ロジスティクス事業を手がける伊Franco Vago S.p.A.の全株式を取得
2013.12日本電気の物流子会社・NECロジスティクスに出資し、合弁の「日通NECロジスティクス」に改称(日通の出資比率49%)
2014.1パナソニックの連結子会社であるパナソニック ロジスティクスに出資(日通の出資比率66.6%)して子会社化、社名を「日通・パナソニック ロジスティクス」に変更
2014.12日通NECロジスティクスの出資比率を51%に引き上げて子会社化
2015.3豊田自動織機の100%子会社で官公庁・金融機関・医療機関などの文書・データ保管事業を手がける「ワンビシアーカイブズ」の全株式を取得
2016.4名鉄運輸に出資(発行済株式総数の20.0%)し、名古屋鉄道に次ぐ第2位の大口株主となる
2018.3高級ファッションブランドの倉庫運営や配送を手掛ける伊Traconf S.r.l.(トラコンフ)の全株式を取得

文:M&A Online編集部

この記事は企業の有価証券報告書などの公開資料、または各種報道をもとにまとめたものです。