友好的M&Aに限る。相手企業の人を大切にするー。物流機器メーカーのダイフク<6383>はこの方針に沿って2000年以降、企業や事業の買収を活発化してきた。2004年に自動倉庫事業を譲り受けたキトー<6409>を皮切りに2014年にニュージーランドの空港手荷物機器メーカーBCS Group Limitedまで19件の買収などを実施。いずれも事業の拡大につなげてきた。現在、高水準の受注が続いており、2018年3月期は売上高、利益とも過去最高を更新する見込みのため生産能力増強が不可欠な状況。ここ3年ほどは無風状態だが、今後は生産拠点拡充を目的とした買収が実現する可能性が高そうだ。

M&Aのスタイルが決まるきっかけとなったキトーの事業買収

 ダイフクの事業は6つの分野に分けることができる。一般製造業と流通業向けの自動倉庫などを手がけるFA&DA(Factory Automation&Distribution Automation)。半導体や液晶生産ライン向け搬送装置などを手がけるeFA(e-Factory Automation)。自動車生産ライン向け搬送装置などのFA(Automotive Factory Automation)。空港向けの手荷物搬送装置などを手がけるATec(Airport Technologies)。洗車を手がけるAWT(Auto Washing Technologies)。産業用のパソコンやIoT(モノのインターネット)関連システムなどを手がける電子機器の6つがそれだ。それぞれの分野ごとに事業拡大を目指し買収を進めてきた。

 M&Aの基本方針が決まるきっかけとなったのはFA&DA分野で2004年に実施したキトーからの一部事業の譲り受けだった。キトーはチェーンブロックのメーカーで、自動倉庫の生産、販売も行っていた。キトーが主力のチェーンブロックに集中することになったため、自動倉庫事業をダイフクに売却。ダイフクではキトーの顧客、社員を譲り受け、事業を継続した。ダイフク側から社長をはじめ生産や管理などのための社員は送り込まず、買収以前のままの体制で運営した。当時のトップである竹内克己社長が「友好的M&Aに限る。相手企業の人を大切にする」との方針を明確にしたことから、このスタイルがその後の同社M&Aの基本となった。

自動倉庫:ダイフク提供

 FA&DA分野では2005年にソフトウエア会社であるアルベックの一部事業を買収。2009年にはコマツ系の販売会社と製造会社であるコマツユーティリティとコマツリフトILDから自動倉庫事業を買収。さらに2010年には欧州に足がかりを作る目的で、オーストリアのKnapp AG と業務提携を締結し、資本参加も実施した。同様に米国でも自動倉庫の事業拡大のためメーカーでありインテグレーターでもあるWynright Corporationを企業ごと買収するなど、着実に事業拡大の布石を打ってきた。

先生企業の買収で新分野に参入

 半導体や液晶生産ライン向けシステムのeFA分野では案件は少なく、2012年に実施した日立プラントテクノロジーの半導体と液晶の搬送装置事業を買収。同時にガラス搬送時に用いるカセットのメーカーである岩崎製作所を企業ごと買収。社員、工場などすべてを引き継いだ。自動車生産ライン向けのAFA分野ではさらに案件は少なく、2008年に自動車工場での工事を請け負う大阪機設工業を企業買収した。同社の社長が高齢で後継者が不在だったためダイフクが社員、工場をすべて譲り受けた。

 空港向けの手荷物搬送装置などを手がけるATecでは案件が6件と多い。これは空港の手荷物搬送装置は国や地域によって仕様が異なるため、それぞれの国や地域ごとに現地の企業が必要になったためだ。2007年に実施した米国Jervis B. Webb Company はT型フォードの生産ラインを手がけた経験のある老舗企業で、ダイフクにとっては搬送装置の技術導入先でもあった。この先生企業を買収することで、空港手荷物搬送事業に参入することになった意義深いM&Aであった。

空港手荷物搬送装置:ダイフク提供

 その後は2011年に空港手荷物で欧州進出を目的にLogan Teleflexの米国、英国、フランスの各法人3社を買収。さらに2012年には空港での事業拡大を狙って空港でのさまざまな作業を行う人材を派遣する企業であるElite Line Services, LLCを買収。さらに豪州地域ではニュージーランドのBCS Group Limitedを買収、世界各地で空港手荷物の搬送装置事業を展開できるようになった。

 洗車機事業のAWTは主に洗車機のメーカーの買収案件で、日本のYASUI、韓国のHallim Machinery Co,LTD.を相次いで買収、事業の規模を拡大した。産業用パソコンなどを手がける子会社のコンテック<6639>による電子機器事業では医療用機器に強い米国DTx Inc.を2012年に買収した。

ダイフクの過去のM&A(2000年以降) ※社名はM&A当時のもの

FA&DA
2004年 4月 ㈱キトー(日本) 一部事業の譲り受け
2005年 2月 ㈱アルベック (日本)  一部事業の譲り受け
2009年 5月 コマツユーティリティ(株) (日本)  一部事業の譲り受け
2009年 5月 コマツリフトILD㈱ (日本)  一部事業の譲り受け
2010年10月 Knapp AG (オーストリア)  業務提携·資本参加
2013年10月 Wynright Corporation (米国) 企業買収
eFA
2012年 4月 ㈱日立プラントテクノロジー(日本) 一部事業の譲り受け
2012年 4月 ㈱岩崎製作所 (日本) 企業買収
AFA
2008年  1月 大阪機設工業㈱(日本) 企業買収
ATec
2007年12月 Jervis B. Webb Company (米国) 企業買収
2011年 4月 Logan Teleflex, Inc.(米国) 企業買収
2011年 4月 Logan Teleflex (UK) Ltd.(英国) 企業買収
2011年 4月 Logan Teleflex (France) S.A.S. (フランス) 企業買収
2012年11月 Elite Line Services, LLC (米国) 企業買収
2014年12月 BCS Group Limited (ニュージーランド) 企業買収
AWT
2006年12月 キュービカエーエムエフ㈱ (日本) 企業買収
2011年 1月 ㈱YASUI (日本) 一部事業の譲り受け
2012年 8月 Hallim Machinery Co,LTD.(韓国) 企業買収
電子機器
2012年12月 DTx Inc. (米国) 企業買収

売り上げ、利益とも過去最高を更新

 ダイフクの2018年3月期は連結売上高が2017年3月期比27.8%増の4100億円、同営業利益は同60.2%増の370億円に達する見込み。実現すればいずれも過去最高を更新することになる。中国や台湾で半導体や液晶向けの搬送装置に対する需要が旺盛であるほか、ネット通販系の倉庫が大型化しており、設備投資が活発なことが背景にある。米国で自動車工場の大型の更新需要があることも見逃せない。こうした好調業種に積極的な営業を展開することで、2018年3月期の受注高は同37.4%の4900億円と同期の売り上げを大きく上回る見込みだ。

半導体、液晶、ネット通販、自動車工場などで高まるM&A

 受注が前年同期よりも40%近く伸びるとなると、当然ながら生産能力が不足してくることになる。「現時点では何も決まっていない」(広報部)としているが、半導体や液晶、ネット通販関連、自動車工場関連などでのM&Aの可能性は高まっていると考えられる。現トップの北條正樹社長はM&Aの基本方針を定めた竹内克己前社長とM&Aに関しては同じ考えを持っており、買収先企業に社長をはじめ多くの社員を送り込むような手法は取らないものと思われる。ダイフクによる最後のM&Aは2014年12月であり、ここ3年ほどはM&Aを実施していない。どのような企業をどのような形で取り込むのか。20件目のM&Aはそう遠くはなさそうだ。

 ダイフクは1937年に大阪市西淀川区で株式会社坂口機械製作所として発足。従業員150人で製鉄用の鍛圧機械を中心に製造。翌1938年から各種クレーン、起重機船なども手がけるようになった。1947年に当時大阪と福知山に工場があったため社名を「大福機工株式会社」に変更した。1959年にはトヨタ自動車工業の日本初の自動車専用工場にウェブ・コンベヤを納入。このころからモノを動かすマテリアルハンドリング(マテハン)に専念するようになった。現在はさまざまな分野で、保管、搬送、仕分け・ピッキング、情報システムというマテハンの多様な要素を組み合わせた製品を供給している。

ウェブ・コンベヤ:ダイフク提供

この記事は、当該企業の取材を基に執筆いたしました。

文:M&A Online編集部