クボタ<6326>が4半世紀ぶりに大規模な広告宣伝活動を展開している。久保田鉄工からクボタに社名変更した1990年以来のことだ。今回はM&Aなどで海外事業が拡大し、売上高の7割近くにまでを海外が占めるようになったため、もう一度日本国内でのクボタの知名度を上げるのが狙い。広告活動ではベトナムで使われている農機、フランスで活躍する建機、中東でインフラ整備に貢献する水道管を取り上げており、今後のM&Aについてもこうした分野が中心となりそうだ。

 日本では農家が減少し、クボタの主力製品である農機の市場は縮小傾向にある。長い歴史を持つ水道管についても国内の需要に盛り上がりは見られない。こうなると自ずと海外志向が強まるのは無理のないところ。このため北米では小型農機に加え、中型、大型の農機にも力を入れてきた。アジアでは中国やタイで農機の新工場を稼働させたほか、それぞれの国にあったインプルメント(トラクターに装着して使用する作業機器)の開発を進める。欧州でもインプルメントの開発には力を入れており、成果も出てきた。

2000年ごろから海外シフトが鮮明に

 海外シフトが鮮明になり始めたのは2000年ごろ。当時の全社売り上げは9945億円で、海外売上高比率は20%程度だった。これが2016年には売上高が1兆5900億円ほどになり、海外売上高比率は65.5 %に達した。こうした状況を支えた一つがM&Aだ。

 クボタは2011年にノルウェーのトラクター用インプルメントメーカーであるクバンランドを買収し、世界の畑作市場に本格参入した。クバンランドは1879年設立の歴史のある企業で、欧州だけでなくロシアや中国などにも工場を持ち、当時の売上高は約385億円。同社を買収することにより、散布機や種まき機などの畑作用機器の品ぞろえ充実させることができた。   

クボタの主なM&A

年月内容
2011年12月Kverneland ASAを買収
2012年9月富士化水工業から事業を買収
2016年5月Great Plains Manufacturing Inc.を買収

米国で大型機の開発、販売に挑戦

 その後、農機関連では2016年5月に米国のインプルメントメーカーであるグレートプレーンズマニュファクチュアリング(GP)を買収した。GP社は種まきや掘り起し、草刈りなどの作業を行うためのインプルメントを製造しており、2007年から提携し、小型トラクターの事業拡大に取り組んできた経緯がある。この買収で大型のインプルメントの開発を進め、品ぞろえを充実させる計画だ。

 農機のほかには、2012年に戸田工業(広島県大竹市)の100%子会社で水処理エンジニアリング会社である富士化水工業(東京都港区)から、中国以外の環境関連事業を買収した。富士化水工業は1957年の創業以来、産業排水処理や排ガス処理などの環境エンジニアリング事業を手がけてきた。この合併によってクボタの水処理事業の内容や地域を拡大させてきた。

 2011年のクバンランド社、2012年の富士化水工業、2016年のGP社の買収と並行して、クボタでは海外での投資を活発に行ってきた。2013年にタイで部品調達会社を設立し、米国では中型トラクターの生産工場を設立した。さらに2014年にはフランスに大型畑作用トラクターの生産会社を設立し、2015年にはインドで現地ニーズに適合した多目的トラクターを市場投入するなど国際化を急速に推し進めてきた。これが現在、海外売上高比率65.5%となって表れている。

〇クボタの部門別売上高(2015年12月期は9カ月決算

決算2014/03期2015/03期2015/12期2016/12期
機械1兆1530億円1兆2149億円1兆0202億円1兆2721億円
水・環境3139億円3432億円2037億円2945億円
その他415億円286億円207億円294億円
1兆5085億円1兆5869億円1兆2447億円1兆5960億円

〇クボタの部門別製品

事業名内容
機械主として農業機械及び農業関連商品、エンジン、建設機械の製造・販売等
水・環境主としてパイプ関連製品(ダクタイル鉄管、合成管、ポンプ、バルブ等)、  環境関連製品(各種環境プラント等)の製造・販売等 社会インフラ関連製品 (素形材、スパイラル鋼管、自動販売機、精密機器、 空調機器等)の製造・ 販売等
その他主として各種サービスの提供、住宅機材の製造・販売等

 こうした積極的な海外展開が功を奏し、業績は好調に推移している。2013年3月期に1兆2215億円だった売上高は2016年12月期には1兆5961億円に増えた。2015年に決算期を3月から12月に変更したため、この期は9カ月決算だったため数字が落ちているものの、2016年の12月期の12カ月決算では2015年3月期より増えており、順調に推移していることが分かる。営業利益についても2014年、2015年の2000億円超の水準には届かないものの、1888億円とそれに迫る状況にある。これに伴って株主資本も増えており、2013年3月期に7945億円だったのが、2016年12月期には1兆1988億円と、4000億円ほど積み上がっている。資金的な余裕は十分にあるといえる。

〇クボタの営業利益の推移(億円)

決算年月2013年3月2014年3月2015年3月2015年12月2016年12月
営業利益1206億円2039億円2031億円1669億円1888億円

〇クボタの純資産、株主資本の推移(億円)

決算年月2013年3月2014年3月2015年3月2015年12月2016年12月
総資産1兆8526億円2兆1107億円2兆4722億円2兆5329億円2兆6706億円
株主資本7945億円9358億円1兆1001億円1兆1403億円1兆1988億円

海外中心に進むM&A

 「食料・水・環境を一体のものとしてとらえ、優れた製品・技術・サービスを通じて課題解決し、地球と人の未来を支え続けることが私たちの使命と考えます」。クボタの木股昌俊社長はこう宣言する。この方針に沿って動いているのが広告宣伝活動であり、M&Aもそこから外れることはない。農家の減少、インフラ投資の抑制といった国内の情勢を見る限り海外に目を向けざるを得ない状況は今後も大きくは変わりそうにない。むしろ海外には食料生産、水供給、環境保全などの面で大きな需要がある。こうした状況を踏まえれば、今後のM&Aが海外を中心に展開される可能性は高いだろう。

19歳の青年が鋳物業で創業

 1890年に19歳の久保田権四郎が鋳物業を開業。衡器用鋳物、日曜品鋳物の製造を手がけたのがクボタの始まり。3年後の1893年には現在の経営の柱の一つである水道用鋳鉄管を日本で初めて国産化した。もう一つの柱である農機はそれから54年後の1947年に投入した耕うん機にまで時代が進む。1960年には国産初の畑作用乗用トラクターを開発。2年後の1962年にはさらにもう一つの柱である環境分野に本格参入した。1990年には創業100周年を迎え、社名をクボタに変更した。

文:M&A Online編集部