発表翌日の7月19日、ソフトバンクの株式は、一時前週比で678円安(11.3%安)の5329円まで下げた。ソフトバンクの株主は、初期的には、ARMの買収を高いと判断した。①で記載した通り、ARMの財務内容からみた企業評価と買収価額とのギャップに敏感な反応であった。ただ、10月31日には6602円まで回復している。ソフトバンク全体としては堅調に推移しており、未知数のARMに関しては孫氏のお手並みを拝見するというスタンスであろう。
ARM買収前の6月中に、複数の関係会社株式が売却されたが、この時我々は、ARM社の買収の事は知らない。一連の売却は、財務体質の改善等が理由とされた。アリババ株式の売却(100億米ドル)、スーパーセル株式の売却(7700億円)と配当金(1100億円)、ガンホーのTOBに応募(730億円)と次々に売却の発表があった。約2兆円の資金調達である。
ARMの買収が念頭にあった事は間違いない。結果として、買収資金は、手元資金が2.3兆円、借入が1兆円となり、3.3兆円の買収資金のうち約70%が手元資金で賄えた、余裕のある買収となった。孫氏の言葉を借りれば、今回の買収は、「フルスイング」ではなく、「コントロールショット」という事だ。