シャープ<6753>が東芝<6502>のパソコン事業を買収するとの観測が急浮上している。台湾の鴻海(ホンハイ)傘下で経営危機を脱したシャープは2017年12月、1年半ぶりに東証1部に復帰した。一方、崖っぷちに立つ東芝はシャープと入れ替わるように東証2部に転落。医療機器、白物家電、半導体など主力事業を次々と手放す中、パソコン事業の行方もかねて注目されてきた。

富士通もレノボ陣営に

 国内パソコン市場をめぐっては2017年11月、勢力地図を塗り替えかねない新たな合従連衡の動きが起きたばかり。富士通<6702>の100%子会社、富士通クライアントコンピューティングに中国のレノボグループが51%出資し、レノボ傘下で事業展開することになったのだ。

 いうまでもなくレノボは今や世界最大のパソコンメーカー。米国のヒューレット・パッカード(HP)、デルと3強を形成する。「Think Pad」で知られるIBMのパソコン事業を買収したのは2005年。日本では2011年、NEC<6701>のパソコン事業を傘下に収め、NEC・レノボ・ジャパングループを形成し、国内シェアの約25%を持つ。

 NEC・レノボ連合に次ぐ国内2位が富士通で、両者を合わるとシェアは40%を超える一大勢力が誕生する。新体制での富士通のパソコン事業は2018年度第1四半期(4~6月)に動きだす。

シャープ、鴻海の後ろ盾で業績回復。IT機器 再参入の素地整う?

 そうした局面で、今回売却話が改めて急浮上した東芝のパソコン事業は国内3位。買収を検討中とされるシャープは2010年、パソコン事業から撤退していた。その同社がなぜ、パソコンに再参入なのか。

 一つはシャープの経営再建が軌道に乗ってきたこと。シャープは大黒柱である液晶パネル事業の不振などで2016年3月期に債務超過に陥り、その後、鴻海グループの子会社として再建を進めてきたが、2018年3月期は最終損益が4年ぶりに黒字に転じる見込みだ。すでに述べたように、昨年末には東証1部に復帰を果たすなど業績は着実に上向いている。その意味で、IT機器分野へ再度参入する素地が整いつつあるといえる。

 もう一つは鴻海グループが他にない強みを持つこと。鴻海は世界第2位HP、同3位のデルのパソコンを受託生産している。鴻海はパソコンをはじめ、薄型テレビ、スマホなどのEMS(電子機器受託製造サービス)で世界トップに立つ。

東芝パソコン、かつて欧米で一世を風靡

 鴻海グループ出身で、シャープを率いる戴正呉社長は昨年来、IT機器市場に再参入の意欲を示していた。その際、中核製品と目されるのがパソコンだ。鴻海グループの経営資源を生かせば、パソコン事業を再開する場合にかなりのメリットが期待できそうだ。

 もっとも東芝のパソコン事業は赤字とされ、維持するにしても売却するにしても、その出口戦略が喫緊の課題だ。

 東芝のパソコンは国内でNEC、富士通、ソニー<6758>に次ぐポジションにあった。これに対し、欧米では1990年代、一世を風靡した時期があり、なかでも米国ではひところ、ノート型パソコンでトップシェアを誇った。そのパソコン事業は後に、海外メーカーに製造委託する際の「バイセル(Buy‐Sell)取引」をめぐる不適切会計の温床となり、今日の経営危機の一因となった。

 国内パソコン市場はスマホなどに押され、伸びが止まっている状態。「VAIO」で高い人気を誇ったソニーは2014年、パソコン事業を分離。VJホールディングスが出資した同名の「VAIO」(長野県安曇野市)が継続している。大手電機ではこのほか、「Let's note」を擁するパナソニック<6752>が “孤塁”を守っている。

文:M&A Online編集部