それからの東芝

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それからの東芝

東芝については6月30日付け「どうして東芝はそんなに死に急ぐ?」から取り上げていませんでしたので、その後の経過も含めてまとめてみます。

 まず本日(8月14日)午後にBloombergが関係者の話として「東芝のメモリー事業売却交渉、支払時期などを巡り失速」なる記事を配信し、それまで高値307円まで買われていた東芝株が260円まで急落、前週末比5円安の287円で終わりました。

 本当の関係者なら守秘義務が課せられているはずで、よくある「自称関係者」の噂話をBloomberg東京事務所が記事にしたような印象ですが、その中に「(優先交渉権を与えられている)日米韓連合は(東芝の)合弁相手の米ウエスタンデジタル(以下、WD)との係争解決を条件にしている」という部分があります。

 もしこれが本当なら、そもそも日米韓連合への売却など最初からできるはずがなかったことになります。そもそも最初からWDとの係争を抱えたまま、よく日米韓連合が(その他の連合でも同じですが)交渉のテーブルに着いたなあと不思議に思っていましたが、東芝の経営陣も「決めてしまえば何とかなる」くらいに考えていたのでしょう。

 当然のように日米韓連合への売却交渉は進展しておらず、今頃になってKKRとWDの連合との売却交渉が水面下で再開されているようです。大変に情けないことに日米韓連合への売却では議決権の過半を確保する約束になっていた産業革新機構がKKRにもすり寄っていますが、日米韓連合の中心にいるベインキャピタルに比べれば「はるかにえげつない」KKRがすでにWDの協力を取り付けているなら、最終的には徹底的に買いたたいて(1兆数千億円ほどで?)手に入れてしまうことになりそうです。

 そもそも日米韓連合でもKKR・WD連合でも、独占禁止法の審査期間を考えると債務超過解消のタイムリミットとされる来年3月末までの売却完了は「すでに大変に厳しい状況」となっています。

 東芝は2016年3月末に、東芝メディカルのキャノンへの売却が完了していないにもかかわらず強引に売却益を計上し、それで「待ったなし」となっていたウェスティングハウスの減損を一部だけ行ったことがあります。まあ今回も「何とかなる」と考えているのかもしれません。

 そして遅れに遅れていた東芝の2017年3月期決算が8月10日、PwCあらた監査法人から「限定付き適正意見」を得て、ようやく提出されました。「限定付き」とは東芝の内部管理体制の不備がまだ改善されてないからのようですが、それなら最初からそこは呑んで「限定付き適正意見」を貰うように交渉していれば、ここまで時間がかからなかったはずです。

 その2017年3月期決算では、最終純損益が9656億円の損失(前期も4600億円の損失)、2017年3月末の債務超過が5529億円と「ようやく」確定しました。

 つまりこの5529億円の債務超過を2018年3月末までに解消できないと、東京証券取引所の規定では上場廃止となります。また東証は本年3月に東芝を内部管理体制の不備を理由に監理ポストに割り当てており、これも東証が改善を認めなければ上場廃止となりますが、こちらの方は東証が判断するため最終的には「問題なし」となるはずです。

 ところが2018年3月末までの債務超過解消は、できなければ上場廃止と東証の上場規定にはっきりと明文化されており、それで上場廃止となった企業もたくさんあるため、さすがに東証でも「東芝だけ特別扱い」とはできないはずです。

 そこでどうしても来年3月までに半導体事業会社を外部に売却しなければならないとなりますが、このまま時間に迫られていくと「そうでなくても当事者意識がなくなっている」東芝の経営陣では、ますます海外勢に煽られ「とんでもない条件でも売却してしまう」ことになりそうです。

 そういえば8月7日に、キング・ストリート・キャピタルなるヘッジファンドが東芝の5.81%(2億6400万株)を取得したとする大量保有報告書を提出しています。6~7月に市場で買い付けているようですが、これなども半導体事業売却完了=上場廃止回避とのインサイダー情報を関係する海外勢から得ているとしか思えません。

 つまり日米韓連合でもKKR・WD連合でも、これから時間が迫れば迫るほど足元を見られることが明らかなら、ここはいったん上場廃止にしてでも半導体事業を中心に再建策を立て直し、それでも売却となれば徹底的に高値で売却できるよう強気に出るべきです。

 上場廃止となっても東芝が生き残れば、どこかで再上場のチャンスがあるはずで、株式が紙くずになることもありません。それがオール日本にとって「最善の策」のような気がします。

本記事は、2017.8.15公開「闇株新聞」より転載しております。

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