わずか10日足らずの出来事だった-。日本ペイントホールディングス<4612>は米国の塗料メーカー・アクサルタ・コーティング・システムズの買収提案を行ったと発表したのが11月22日。買収交渉を中止すると発表したのが12月1日。この間は9日間。何年もかかるM&Aが多い中、一瞬の出来事であった。

3つの1兆円

 今回の買収劇では三つの1兆円がキーになった。買収金額は公表されていないが、約1兆円とみられている。日本ペイントの株式の時価総額が1兆円強、アクサルタの時価総額が1兆円弱。時価総額が1兆円強の企業が時価総額1兆円弱の企業を1兆円で買収するという語呂のいい話だが、M&Aの世界ではバランスがいま一つ。

大きなかけ

 57社の買収を手がけている日本電産は、時価総額の5%を買収資金としており、時価総額4兆7000億円の同社の場合、買収資金は2350億円との計算になる。同社の永守重信会長兼社長は「大きなところを買収して失敗したら会社がつぶれる」といい、時価総額の5%にこだわってきた。もちろん大型の買収を行うとの方針の企業は存在するが、ほぼ同規模の企業買収となると大きなかけになることは間違いない。このことは投資家も感じているようで、買収中止を発表した同日の日本ペイントの株価が一時前日比10%ほど高くなった。

 塗料業界ではM&Aが活発化しており、日本ペイントは世界でメジャーな塗料メーカーとなるために思い切った決断をしたわけだ。この戦略は今回の買収断念後も変わらず、1日に発表したリリースでも「今後も積極的にM&A・戦略的提携を進める」とある。