海外メディアも注目。音楽市場で繰り広げるリカーリング型事業とは

ソニーが仏音楽会社ビリーブデジタルを買収する方向で最終調整へ

ソニー<6758>が、仏音楽会社ビリーブデジタルを400~500 億円で買収する方向で最終調整に入ったことが、日本経済新聞により明らかとなった。アメリカの音楽子会社ソニー・ミュージックエンタテインメントを通じ、ビリーブに出資しているIT関連投資ファンドなどから株式の5割超を取得する。

*なおビリーブのDenis Ladegaillerie CEOは、米音楽業界誌billboardのインタビューに対し、上記記事について「正確ではない(that information is not true)」と反駁。現在、なお関係者たちと協議かつ資金調達中であると説明している。

この買収は、ニューヨークタイムズを始め海外でも大きく報じられた。
ここ数年、世界の音楽市場から動向が注視されるソニー。外国メディアの報道を交えつつ一連の流れを整理する。

インディーズ系に強いビリーブ

今回の買収で対象となったビリーブの創業は2005年。主にインディーズ(独立系)のアーティストの楽曲をインターネット配信大手に配給している。Billboardによれば、2017年7月時点で12,000人のアーティストを擁し、世界16ヶ国にわたり32カ所に拠点を置く。

2015年には、自分自身の楽曲を世界中の配信ストアで販売するサービスの仲介大手 米チューンコア、2016年には、CDの企画・制作を行うレーベル会社 仏ナイーブ(Naïve)を傘下に収めた。年間売上高は約300億円。2015年6月には、音楽ストリーミング配信サービス スポティファイに投資しているTCV(Technology Crossover Ventures)から、6000万ドル(約67億円)の資金調達も行っている。

相次ぐ買収 リカーリング型事業を強化

一方のソニーは、2016年、著作権を管理する音楽出版会社最大手の米子会社ソニー/ATVミュージックパブリッシングを完全子会社化した。ソニー/ATVに折半出資していた故マイケル・ジャクソン氏の遺産管理財団の持分を、バイセル取引の契約に基づき、約840億円で取得。ビートルズ、テイラー・スウィフト、ストーンズの版権などを獲得した。これは、音楽CD販売や楽曲ダウンロード数の減少が続く一方で、定額音楽配信サービスなど音楽出版は安定的な収益が見込め、中長期での安定収益源につながるとの判断による。

また2015年には、インディーズの音楽や映画の配信システムを手掛ける米オーチャードメディアを、約240億円で完全子会社化した。ソニーは、顧客と継続的な関係を結び収益をあげる「リカーリング型」と呼ぶ事業モデルの強化を掲げている。オーチャードの手掛けるインディーズのコンテンツは今後拡大を見込めるうえ、事業モデルがこの成長戦略にも合致するとの思惑による。

さらに今月(2017年7月)、ソニー・ミュージックエンターテインメントは、スウェーデンの音楽ストリーミング配信サービス、スポティファイとライセンス契約を締結した模様。Billboardが関係者の話として報じた。契約内容の詳細は明らかにされていないが、英フィナンシャルタイムズ紙は、スポティファイが負担している巨額のロイヤリティを引き下げる代わりに、2週間は会員が新盤を聴けないようにするといった条件で合意したのではと解説している。

ソニーの業績見通しは

ソニーは、平井一夫社長が2012年に就任して以降の構造改革で、消費者向けエレクトロニクス分野の業績が改善。2017年度業績見通しの内訳においても、金融やエンターテインメントとともに収益構造のバランスの良さが浮き彫りとなった。 

図1:ソニー 2017年度業績見通し

2017年度業績見通し
出典:ソニーホームページ「2017年度 経営方針説明会」

ソニーの、音楽分野での17年3月期の営業利益は758億円。音楽事業も含めると、連結売上高に占めるリカーリング型事業の比率は16年3月期の35%から18年3月期に40%になる見込み(下図参照)。なおリカーリングとは、英語で「循環する」意味を持ち、製品単体の売り切りとは異なり、安定した顧客基盤から継続的に収益を稼げるビジネスモデルを指す。楽曲が使用されるたびライセンス料を徴収できる著作権管理主体の音楽出版事業もその一例。

図2:リカーリング型事業の強化

リカーリング型事業の強化
出典:ソニーホームページ「2017年度 経営方針説明会」

今年5月の経営方針説明会では、リカーリング型事業のさらなる強化についてもコメントがなされた。「サブスクリプション、追加購入、コンテンツなどのリカーリング事業のうち、今後はサブスクリプションなど、お客様と直接触れあう事業の重要性がさらに高くなる」とし、この分野の施策を強化するという。18年3月期は20年ぶりの最高益も視野に入れる同社。世界の音楽業界を股にかけたダイナミックな動きから目が離せない。

文:M&A Online編集部

<参照URL>
https://www.nytimes.com/reuters/2017/07/14/business/14reuters-believe-digital-stake-sony.html
http://www.billboard.com/articles/business/7864354/spotify-licensing-deal-sony-music
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-03-15/O420DF6KLVRL01
https://www.digitalmusicnews.com/2017/07/14/sony-music-believe-400-million/
http://www.musicweek.com/labels/read/believe-acquires-french-indie-label-na-ve-in-10m-deal/065772
http://variety.com/2017/music/news/sony-music-believe-distribution-tunecore-1202496543/