公開日付:2017.10.20
国内鉄鋼3位の(株)神戸製鋼所(TSR企業コード:660018152、法人番号:6140001005714、神戸市中央区、東証1部上場)は10月8日、アルミ・銅事業部門(傘下グループ会社を含む)で検査証明書データを偽装していたことを公表した。その後も主力の鉄鋼事業などで次々と偽装が発覚、神戸製鋼所を含む国内7社、海外5社の計12社まで広がっている。
東京商工リサーチでは、神戸製鋼所と同グループ企業(以下、神戸製鋼所グループ)の取引状況を調査した。神戸製鋼所グループが直接または間接的に取引している1次・2次仕入先総数(重複除く)は1万3,141社(総従業員数433万1,358人)。一方、1次・2次販売先総数(重複除く)は1万942社(同667万8,194人)だった。
データ偽装の国内7社(以下、国内7社)の1次・2次仕入先総数(重複除く)は7,891社でグループ全体仕入先数の6割(60.0%)を占め、総従業員数326万8,159人(グループ全体の総従業員数の75.4%)だった。また、1次・2次販売先総数は3,143社(同28.7%)で総従業員数361万8,265人(同54.1%)だった。
データ偽装した国内7社の1次仕入先(2,045社)のうち、資本金5,000万円未満(個人企業などを含む)は1,591社(構成比77.7%)。1次販売先(583社)では362社(構成比62.0%)で、仕入先、販売先とも直接取引の企業のうち、7割前後を中小企業が占めた。
1次仕入先の地区別では、本社やデータ偽装を行った高砂製作所などがある近畿に1,055社と、5割(51.5%)を占めた。また、中部、中国、九州など、全国に影響が及ぶことが分かった。
※本調査はインターネット企業情報サービス(tsr-van2)の企業相関図から、神戸製鋼所と同社グループの仕入先、販売先を1次(直接取引)、2次(間接取引)に分け、業種、地区などを抽出、分析した。
※1次取引先は直接取引のある取引先、2次取引先は1次取引先と直接取引がある間接取引企業を示す。
※対象は、神戸製鋼所と有価証券報告書に記載の国内連結子会社・持分法適用会社24社のほか、データ偽装が発覚した神鋼メタルプロダクツ、神鋼アルミ線材、神鋼鋼線ステンレスの3社。
10月8日にデータ偽装が公表されたコベルコマテリアル銅管を皮切りに、11日に神戸製鋼所高砂製作所、コベルコ科研、13日には日本高周波鋼業、神鋼メタルプロダクツ、神鋼アルミ線材、神鋼鋼線ステンレスの国内7社で、データ改ざんなどが行われていた。
データ偽装を行った国内7社と直接取引のある1次仕入先は2,045社、間接取引の2次仕入先は6,226社で、仕入先の総数(重複除く)は7,891社、従業員総数は326万8,159人だった。
1次仕入先の都道府県別は、本社とデータ偽装を行った高砂製作所など生産設備がある兵庫県が626社(構成比30.6%)と最多。以下、大阪府380社、東京都247社、神奈川県109社の順。
一方、1次販売先は583社、2次販売先は2,689社で、1次・2次販売先総数(重複除く)は3,143社、総従業員数は361万8,265人だった。1次販売先を都道府県別にみると、最多は東京都129社(構成比22.1%)。次いで、大阪府97社、兵庫県76社、神奈川県30社の順。
データ偽装を行った国内7社の1次仕入先(2,045社)を産業別で見ると、製造業が874社(構成比42.7%)で最も多かった。以下、卸売業570社(同27.8%)、サービス業他243社(同11.8%)と続く。最多の製造業では各種機械・同部分品製造修理業(42社)、製缶板金業(42社)などの企業数が多い。
1次販売先(583社)では、卸売業が238社(構成比40.8%)、製造業が224社(同38.4%)と、2産業で約8割を占めた。卸売業ではその他の産業機械器具卸売業(40社)、鉄鋼一次製品卸売業、非鉄金属製品卸売業(各39社)、製造業ではボルト・ナット・ねじ等製造業、自動車部分品・附属品製造業(各12社)などが上位に並んでいる。
データ偽装の国内7社の1次仕入先は、従業員100人未満が1,726社(構成比84.4%)、資本金5000万円未満が1,591社(同77.7%)と、約8割を占めた。また、1次販売先では従業員100人未満が422社(同72.3%)、資本金5000万円未満が362社(同62.0%)だった。
データ偽装国内7社の取引先には中小企業が多く、事業見直しなどで今後の影響が懸念される。
神戸製鋼所グループの1次仕入先は3,609社だった。産業別では、鉄やステンレスの加工業者など製造業が1,449社(構成比40.1%)で最多。次いで、卸売業が887社(同24.5%)、建設業が465社(同12.8%)、サービス業他が449社(同12.4%)の順だった。
一方、1次販売先は2,376社で、最多は卸売業の706社(同29.7%)。以下、製造業586社(同24.6%)、建設業477社(同20.0%)、サービス業他475社(同19.9%)だった。
神戸製鋼所グループの1次仕入先(3,609社)の業種別では、その他の産業機械器具卸売業が181社で最多。以下、機械器具設置工事業(90社)、一般貨物自動車運送業(86社)、機械設計業(85社)、製缶板金業(77社)と続く。
産業別で最も多かった製造業(1,449社)を業種別でみると、製缶板金業(77社)、化学機械・同装置製造業(75社)、建設機械・鉱山機械製造業(64社)など。
神戸製鋼所グループの1次仕入先(3,609社)を資本金別でみると、「1千万円以上5千万円未満」が2,307社(構成比63.9%)と最も多かった。次いで、「5千万円以上1億円未満」が408社(同11.3%)、「1億円以上」が373社(同10.3%)と続く。
一方、1次販売先(2,376社)では、最多が「1千万円以上5千万円未満」で1,392社(構成比58.5%)だった。次いで、「1億円以上」が375社(同15.7%)、「5千万円以上1億円未満」が269社(同11.3%)の順。
資本金5千万円未満(個人企業など含む)の1次仕入先は全体の約8割(78.3%)、1次販売先で72.8%を占め、神戸製鋼所グループの今後の動向は注意深く見守ることが必要だ。
神戸製鋼所グループの1次仕入先(3,609社)の総従業員数は50万1,162人、2次仕入先(1万346社)の総従業員数は421万3,452人だった。
1次仕入先の従業員数別では、「20人以上50人未満」が860社(構成比23.8%)で最多。次いで、「10人以上20人未満」が687社(同19.0%)、「5人以上10人未満」が607社(同16.8%)、「5人未満」が515社(同14.2%)、「50人以上100人未満」が393社(同10.8%)と続く。
一方、1次販売先(2,376社)は、「20人以上50人未満」が557社(構成比23.4%)と最多だった。以下、「10人以上20人未満」が458社(同19.2%)、「5人以上10人未満」が360社(同15.1%)、「5人未満」が275社(同11.5%)、「50人以上100人未満」が260社(同10.9%)の順。
従業員数が50人未満(不明除く)の1次仕入先は2,669社(構成比73.9%)、1次販売先は1,650社(同69.4%)と、大半は中小企業となっていて、今後の動向次第では地域の雇用問題にも大きな影響が出る可能性がある。
神戸製鋼所グループの1次仕入先(3,609社)を地区別でみると、最多は本社および生産設備のある近畿が1,798社(構成比49.8%)で約5割を占めた。次いで関東813社(同22.5%)で、この2地区で7割(同72.3%)を占めた。
都道府県別の1次仕入先では、本社および生産拠点のある兵庫県980社で最多。次いで、大阪府724社、東京都401社、神奈川県163社、愛知県152社の順。また、データ偽装した日本高周波鋼業の工場がある富山県は75社で、9番目に企業数が多かった。
神戸製鋼所グループの取引企業は中小企業が多い。今回のデータ改ざん問題による事業の見直しにより、取引縮小があった場合、取引先のある地域の経済にも影響が出ることが懸念される。
2016年4月の三菱自動車工業、2017年9月の日産自動車に続き、神戸製鋼所でも不正が発覚した。近年、企業のコンプライアンス(法令順守)意識は高まっているが、日本を代表する企業でコンプライアンス意識の欠如が露呈する事態が相次いでいる。
神戸製鋼所グループの取引先の約8割は中小企業だ。データ偽装を行っていた神戸製鋼所の本社や生産設備のある兵庫県、日本高周波鋼業の工場がある富山県など、主要生産工場のある地域では取引先を含め多くの雇用を創出している。それだけに神戸製鋼所の事業の見直しなどの動きは、地域経済や雇用などに大きな影響を与えかねず、今後の動向が注目される。
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