【3月M&Aサマリー】94件、2カ月連続で13年ぶりの高水準が続く

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秀和システムがTOBで子会社化する船井電機(写真は東京支店)

2021年3月のM&A件数(適時開示ベース)は94件と前年同月を6件上回り、3月として2008年(111件)以来13年ぶりの高水準だった。前月比では1件減。2カ月連続で90件台に乗せるのも13年ぶり。1都3県の緊急事態宣言の延長(3月21日に解除)と重なったものの、むしろ勢いを増した形だ。

米IT企業を1兆円超で買収する日立製作所の大型案件があったため、取引金額も2カ月連続で1兆円の大台を突破した。ただ、これを除くと最高は200億円台止まりで、全体として案件規模の小型化が目立った。

第1四半期、前年と横一線の242件

全上場企業に義務付けられた東証適時開示情報のうち、経営権の移転を伴うM&A(グループ内再編は除く)について、M&A Online編集部が集計した。

1~3月(第1四半期)でみると、総件数は242件で、前年同期の243件とほぼ同数だった。前年の同時期はまだ新型コロナウイルス感染症の影響が本格化する前だったことを踏まえれば、M&A意欲の旺盛さが改めて浮き彫りになった。

3月単月のM&Aの開示件数94件の内訳は買収69件、売却25件(買収側と売却側の双方が開示した場合は買収側でカウント)。このうち海外案件は12件(買収、売却が各6件)だった。

年明け1月のM&A件数は前年同月を21件下回り53件となり、1月として5年ぶりに減少した。新型コロナの感染再拡大を受け、2度目の緊急事態宣言が11都府県に発令され、着手済みの案件の交渉遅延などの影響が出たものと見られる。

ところが、2月は急反転し、リーマン・ショック前の2008年2月と同数の95件となり、13年ぶりに月間90件台に乗せた。3月は年度末ということから例年、件数が伸びるが、今年はさらに勢いづいた。

一方、3月の取引金額は1兆1232億円(前年同月は5728億円)。1~3月では2兆6817億円(前年同期は1兆1157億円)。

日立、米グローバルロジックを1兆円超で買収

3月分の大半を占めたのが日立製作所による米グローバルロジック(カリフォルニア州)の買収。買収金額は有利子負債分を含めて約1兆368億円(96億ドル、別にアドバイザリー費用約54億円)に上り、日立として過去最大の買収となる。買収完了は7月末を見込む。

日立は独自開発したIoT(モノのインターネット)基盤「Lumada(ルマーダ)」の世界展開を加速する。グローバルロジックはシリコンバレーに本社を置き、顧客企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)支援を主力とする。

日立製作所の本社が入るビル(東京・丸の内)

取引金額100億円超の大型案件は日立を含めて3件と、2月の11件から大きく減った。10億円超でみても計13件にとどまり、こちらも2月の26件から半減。総件数が伸びた半面、案件規模については小型化の傾向が顕著となった。

金額2位と3位はいずれもTOB(株式公開買い付け)案件。婚活サイト運営のイグニスは経営陣による買収(MBO)を通じて株式を非公開化する。買付代金は約263億円。

もう一つは、中堅家電メーカーの船井電機に対するTOBで、仕掛けたのはビジネス書を中心に出版事業を手がける秀和システム(東京都江東区)。買付代金は約209億円。

船井電機は売上高の6割が北米向けで、大型液晶テレビを主力とするが、価格競争の激化で赤字が常態化している。M&A経験が豊富で投資家として知られる秀和システム会長兼社長の上田智一氏に経営立て直しを託す。秀和システムは2015年に上田氏が率いる会社に買収され、今日にいたる。

コロナ後を見据え、ホテルでM&A活発に

業種別で動きが目立ったのはホテル関連で、5案件あった。サムティは大阪市、京都市でそれぞれ外資系ホテルの信託受益権などを持つ2社を傘下に収める。アフターコロナを見据え、ホテル需要回復後のビジネスチャンスを取り込むのが狙い。

価値開発は福岡市内に昨秋開業したホテルの信託受益権を保有する会社を、サンフロンティア不動産は佐渡島の老舗ホテル「ホテル大佐渡」を子会社化する。一方、近鉄グループホールディングスは京都、神戸などにある8ホテルを米投資ファンドに譲渡すると発表した。鉄道やホテルなど主力事業の構造改革に伴う資産流動化の一環で、運営は近鉄グループが引き続き担う。

大型再編があったのは廃棄物処理・リサイクル業界だ。タケエイとリバーホールディングスが経営統合を発表した。10月に共同持ち株会社を設立し、タケエイ、リバーを傘下に置く。売上規模は700億円を超え、ダイセキを抜き、アサヒホールディングスに次ぐ業界2位に躍り出る。

◎3月のM&A:金額10億円以上

1 日立製作所 米IT企業のグローバルロジックを買収 1兆368億円
2 イグニス 米ベインキャピタルと共同でMBOを実施し、株式を非公開化 263億円
3 秀和システム 中堅家電メーカーの船井電機をTOBで子会社化 209億円
4 アイ・シグマ・キャピタル 昭和電工傘下の化学品商社、昭光通商をTOBで子会社化 74億円
5 NFCホールディングス 比較サイト運営子会社のウェブクルー(東京都世田谷区)を経営陣に譲渡 35億円
6 フリー 電子契約サービス「NINJA SIGN」展開のサイトビジット(東京都千代田区)を子会社化 27.8億円
7 朝日インテック 腹腔鏡手術支援ロボット開発のA-Traction(千葉県柏市)を子会社化 26.8億円
8 デジタルハーツホールディングス メタップス傘下で中華圏マーケティング支援のMetaps Entertainment(英バージン諸島)を子会社化 21.6億円
9 東京通信 電話相談サービス「カリス」運営のティファレト(東京都渋谷区)を子会社化 20億円
ニッパンレンタル MBOで株式を非公開化 20億円
11 SMN 三陽商会傘下のECシステム構築・運用のルビー・グループ(東京都渋谷区)を子会社化 16億円
12 スズケン 医療介護専用SNS運営のエンブレース(東京都港区)を子会社化 15.4億円
13 メディアドゥ RIZAPグループ傘下の出版社、日本文芸社(東京都江東区)を子会社化 15.1億円

文:M&A Online編集部

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2021/02/01

2021年1月のM&A件数(適時開示ベース)は前年同月を21件下回る53件となり、2016年以来5年ぶりに減少した。新型コロナウイルス感染拡大の第3波で年明けに緊急事態宣言が再度発令され、M&A取引にも影響が及んだ可能性がある。

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