新型コロナでM&A市場はどう変わった? 2020年の総括とトップ50案件

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2020年のM&Aで最大となる4兆円超の売却案件を決めたソフトバンクグループ(東京・竹芝の本社)

2020年のM&A件数(適時開示ベース)は849件と前年を4件下回った。前年比マイナスは2013年(635件)以来7年ぶりだが、過去10年で最多だった2019年とほぼ同水準で、新型コロナウイルス感染の逆風下ながら、大健闘した形だ。国境をまたぐ海外案件が147件と前年から約50件落ち込んだものの、これを国内案件がカバーする展開となった。

11兆円乗せるも、案件の小型化が同時進行

M&Aの取引金額は11兆599億円で、前年(8兆1748億円)を3兆円近く上回り、2018年(13兆7836億円)、2016年(12兆1407億円)に次ぐ3番目の高水準となった。

ソフトバンクグループ(SBG)による英半導体設計大手アームの4.2兆円売却、セブン&アイ・ホールディングスによる米コンビニ3位スピードウェイの2.2兆円買収という巨大案件があったのが主因。SBGの案件は日本企業によるM&Aとして歴代2位、セブン&アイは5位に位置する。

ただ、SBG、セブン&アイの案件を除けば、4兆6000億円程度と前年の6割ほどにとどまる。しかも、この中には日本ペイントホールディングスが1.18兆円規模の第三者割当増資を行い、筆頭株主のシンガポール企業の傘下に入る案件が含まれる。2020年の年間M&A件数自体は前年とそん色がなかったことからすれば、M&Aの国内回帰と案件の小型化が明らかだ。

日本ペイントホールディングスは1.18兆円の第三者割当増資を実施し、シンガポール企業の傘下に

「100億円超」は前年から17件減る

例えば、取引金額が100億円超の案件は51件と、前年を17件下回り、2014年(51件)以来の50件台にとどまった。このうち国内M&Aは22件だった。

全51件を金額帯でみると、100億円~1000億円未満が39件(2019年46件)、1000億円~1兆円未満が9件(同21件)、1兆円以上が3件(同1件)。なかでも1000億円~1兆円未満は前年比半減以下で、6年ぶりに1ケタだった。

その要因は新型コロナ禍で外国とのビジネス往来が行えず、国境を超える海外案件の商談が事実上ストップし、案件の凍結や先送りなどを余儀なくされたと考えられる。海外M&Aは高額となるケースが多く、100億円を超える大型案件の中心を占める。しかし、2020年は海外M&A自体が147件と、前年の197件を50件近く下回り、金額面に影響が及んだとみられる。

緩和マネーを背景に国内案件が牽引役

2020年のM&Aを時系列で振り返ると、1~3月は好調に滑り出した。年間850件を超え、リーマンショック(2008年)以降の最高となった2019年を上回るハイペースを示した。ところが、4月に入ると一転、新型コロナの影響が数字となって表れた。月間のM&A件数は年間を通じて最低の52件で、取引金額は350億円と4月として2009年(307億円)以来11年ぶりの低水準に沈んだ。

4月を大底に持ち直したが、その後は海外を中心とする大型案件がほぼ姿を消す一方、金融緩和マネーを背景に国内案件が増勢を維持し、M&A市場を牽引する構図が鮮明となった。そうした中、8月から9月にかけて突如表面化したのが「兆円超え」M&Aの3連発だ。顔ぶれはすでに触れたとおりだが、同じ年に1兆円以上の巨大M&Aが3件起きるのは日本初のことだ。

M&A件数は8月から11月まで4カ月連続で前年同月を下回り、弱含みで推移した。とはいえ、この間も件数自体は高いレベルを維持し、1~3月の“貯金”や年末の追い込みが加わり、最終的に年間849件と前年とほぼ肩を並べた。

◎2020年M&A:金額トップ50(M&A Online集計)

順位 社名 内容 金額
1 ソフトバンクグループ 傘下の英半導体設計大手アームを米エヌビディアに売却 4.2兆円
2 セブン&アイ・ホールディングス 米コンビニ大手のスピードウェイを買収 2.2兆円
3 ウットラムグループ(シンガポール) 塗料国内最大手の日本ペイントホールディングスを傘下に 1.18兆円
4 三菱商事・中部電力 オランダのエネルギー企業、エネコを買収 5000億円
5 武田薬品工業 大衆薬子会社の武田コンシューマーヘルスケアを米投資ファンドに売却 2420億円
6 NEC スイスの大手金融ソフトウエア企業アバロック・グループを買収 2380億円
7 ニトリホールディングス ホームセンター中堅、島忠の子会社へ対抗TOBを実施 2142億円
8 DCMホールディングス ホームセンター中堅の島忠をTOBで子会社化→不成立 1636億円
9 三井住友ファイナンス&リース 不動産投資ファンド運営のケネディクスをTOBで子会社化 1319億円
10 ソニー 米AT&T傘下でアニメ配信大手のイレーションを買収 1222億円
11 三井不動産 東京ドームをTOBで子会社化 1205億円
12 アークランドサカモト ホームセンター中堅のLIXILビバをTOBなどで子会社化 1085億円
13 ニチイ学館 米投資ファンドのベインキャピタルと組みMBOで株式を非公開化 999億円
14 前田建設工業 前田道路をTOBで子会社化 861億円
15 総合メディカルホールディングス 投資会社ポラリス・キャピタル・グループと組みMBOで株式を非公開化 763億円
16 米ベインキャピタル 三井E&Sホールディングス傘下の昭和飛行機工業をTOBで子会社化 694億円
17 大王製紙 丸紅と共同でブラジルの衛生用品メーカー大手Santherを買収 584億円
18 新生銀行 ニュージーランド大手のノンバンクUDC Financeを子会社化 470億円
19 住友不動産 中国での分譲マンション開発子会社「大連青雲天下房地産開発」を合弁相手に譲渡 456億円
20 キリンホールディングス 豪州での飲料事業を同国乳製品大手、ベガ・チーズに譲渡 409億円
21 アウトソーシング アイルランド最大の人材会社Cpl Resourcesを子会社化 396億円
22 読売新聞グループ本社 よみうりランドをTOBで子会社化 389億円
23 オープンハウス 投資用マンション事業のプレサンスコーポレーションをTOBで子会社化 367億円
24 オリンパス 呼吸器関連医療機器メーカーの米Veran Medical Technologiesを子会社化 354億円
25 ノーリツ鋼機 DJ・クラブ機器大手のAlphaTheta(旧パイオニアDJ、横浜市)を子会社化 350億円
26 豆蔵ホールディングス 投資ファンドのインテグラルと組みMBOで株式を非公開化 344億円
27 キリン堂ホールディングス 米投資ファンドのベインキャピタルと組みMBOで株式を非公開化 338億円
28 オーデリック MBOで株式を非公開化 306億円
29 フェローテックホールディングス 半導体ウエハーの中国製造子会社の株式60%を地方政府などに譲渡 296億円
30 ティーガイア 富士通傘下の富士通パーソナルズから携帯電話販売事業を取得 287億円
31 住友ベークライト 川澄化学工業をTOBで子会社化 270億円
32 アンジェス ゲノム編集技術ベンチャーの米エメンドバイオを子会社化 262億円
33 グローリー セルフ注文・決済機器大手の仏アクレレック・グループを子会社化 242億円
34 アント・キャピタル・パートナーズ スカラ傘下のソフトブレーンをTOBで子会社化 232億円
35 日本精工 英スペクトリスから設備・プラント状態監視システム事業を取得 211億円
36 META Capital ハーン銀行(モンゴル)などを傘下に持つ澤田ホールディングスをTOBで子会社化 208億円
37 SBSホールディングス 東芝傘下の東芝ロジスティクス(川崎市)を子会社化 199億円
38 東海カーボン 炭素黒鉛製品メーカーの仏Carbone Savoieを子会社化 197億円
39 ツムラ 漢方製剤用原料を生産・販売する中国「盛実百草」(天津)を子会社化 187億円
40 麻生 水産物取り扱いの東都水産にTOB、子会社化も視野に 181億円
41 日本アジアグループ 米投資ファンドのカーライル・グループと組んでMBOで株式を非公開化 164億円
42 共英製鋼 カナダのMCアルタスチールから電炉事業を取得 155億円
43 昭和産業 三井物産傘下のサンエイ糖化(愛知県知多市)を子会社化 150億円
44 サムティ ベトナムの住宅分譲事業会社S-VINを子会社化 147億円
45 タムロン 創業家の資産管理会社ニューウェル(さいたま市)を子会社化 144億円
46 カルビー サツマイモ加工卸のポテトかいつか(茨城県かすみがうら市)を子会社化 139億円
47 アステラス製薬 体内埋め込み型医療機器開発の米iota Biosciencesを買収 134億円
48 長谷川香料 食品香料メーカーの米MISSIONを子会社化 133億円
49 ヤマダホールディングス 注文住宅のヒノキヤグループをTOBで子会社化 126億円
50 小林製薬 一般医薬品メーカーの米Alvaを子会社化 114億円

※金額100億円超は上記のほかに、荏原がトルコのポンプメーカー「バンサン」を113億円で子会社化する案件がある

文:M&A Online編集部

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2020年12月のM&Aは前年同月と同数の78件となり、過去10年で最多だった2019年に並んだ。取引金額10億円超のM&Aは19件と2月23件、11月21件に続く年間3番目で、ここへきて「コロナ」以前の月間20件前後のペースに戻した形だ。

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