半導体メモリ大手のキオクシアホールディングス(旧東芝メモリホールディングス)は2020年9月28日、翌週の10月6日に予定していた東京証券取引所への新規上場(IPO)を延期すると発表した。延期の理由について同社は「最近の株式市場の動向や新型コロナウイルス感染の再拡大への懸念など諸般の事情を総合的に勘案」したと説明している。本当にそうなのか?

説得力がない「上場延期理由」

「株式市場の動向」とはIPOの初値状況を指すと見るのが自然だろう。確かに9月17日に東証1部で新規上場した雪国まいたけ<1375>の初値は2100円と公募価格の2200円を下回った。 が、6月以降で初値が公募価格を下回ったのは、この1件だけ。

とりわけ直近のIPO銘柄には短期的な資金が投入されており、9月24日に上場したまぐまぐ<4059>の初値は3400円と公募価格810円の約4.1倍、同日に上場したトヨクモ<4058>の初値も9020円と公募価格2000円の約4.5倍をつけた。株式市場の動向としては、まさに今が「新規上場する絶好のチャンス」なのだ。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の再拡大についても、国内では8月をピークに1日当たりの新規感染者数はなだらかな減少が続いている。海外では7月に新規感染者数が30万人に達してからは横ばいのままだ。

もちろん秋から冬にかけて北半球で感染が再拡大する危険性はある。だが、それはキオクシアが上場日を正式に決めた9月17日時点で分かっていた事実であり、延期決定までの11日間に大きな状況の変化はない。つまりキオクシアが発表した延期の理由には、全く説得力がないのだ。

キオクシアが発表した上場延期のお知らせ(同社ホームページより)

そうなると本当の理由は、残る「諸般の事情」にありそうだ。報道では米中貿易摩擦激化に伴う中国通信機器大手のファーウェイ(華為技術)に対する米国政府による半導体輸出規制の発効で業績の不透明感が強まったことや、国内大手証券が発表した「メモリー需要の弱含みや顧客の在庫消化の姿勢の継続で、2020年7~9月期のメモリー価格は前四半期比で8~10%の下落になる」との予想などがIPOを見送らせたとの見方が出ている。