新型コロナウイルス向けワクチン開発の動きが活発化してきた。1 億2000万回分の供給で日本政府と基本合意している英国の製薬会社アストラゼネカの日本法人であるアストラゼネカ(大阪市北区)は2020年9月4日に、日本国内で第1/2相臨床試験を始めたと発表した。

日本企業の中でワクチン開発が先行していると言われるアンジェス<4563>は9月8日に、7月に実施した大阪市立大学医学部附属病院での第1/2 相臨床試験に次いで、大阪大学医学部附属病院でも第1/2 相臨床試験を始めたと発表した。

世界ではワクチン開発の最終段階である第3相臨床試験がすでに始まっており、日本の出遅れは否めないが、政府が目指す2021年前半までに日本国民全員分のワクチン確保に向け、今後開発の動きはさらに活発化しそうだ。

ただ英アストラゼネカが新型コロナウイルス向けワクチンの臨床試験を一時中断しているほか、アストラゼネカなどワクチン開発を進めている欧米の製薬会社9社が共同で、ワクチンの安全性や効果が確認できるまで承認申請はしないとする声明を出すなど、開発のスピードダウンにつながる懸念材料が浮上してきた。

果たして、日本政府が掲げる目標は達成できるだろうか。

日本で第1/2相臨床試験を開始

アストラゼネカは日本国内の複数の施設で、18歳以上の被験者約250人を対象にした第1/2相臨床試験に入った。開発中のワクチンを日本人に接種した際の安全性と有効性を評価する。

アストラゼネカは現在、開発中のワクチンの第1/2相臨床試験を南アフリカ共和国で、第2/3相臨床試験を英国で、第3相臨床試験を米国とブラジルで実施している。

同社は2021年初めから1億2000万回分を日本に供給し、このうち3000万回分については2021年1-3月に供給する計画で、日本での第3相臨床試験に向けて開発のスピードアップが見込まれる。

アンジェスは大阪大学医学部附属病院で、健康成人志願者を対象とした筋肉内接種でのワクチンの安全性や免疫原性の評価を行う。30人を3グループに分け、それぞれ10人ずつに2週間間隔での2 回接種、4週間間隔での2 回接種、2週間間隔での3 回接種を行い、最適な接種間隔や接種回数などを検討する。

同社では「ワクチン開発は計画通り進んでいる」としており、接種完了後、経過観察を経て、大阪市立大学医学部附属病院と、大阪大学医学部附属病院での第1/2 相臨床試験成績を総合的に判断する速報結果を、2020 年第4 四半期(10-12月)に公表する予定という。

さらに、同社は9月8日に米国Brickell Biotechとの間で、新型コロナウイルス向けDNAワクチンの共同開発契約を結んでおり、米国でも臨床試験を行う予定だ。

安全性と効果を重視

米国などで第3相臨床試験が行われている英アストラゼネカのワクチンについては、深刻な副反応が疑われる事例が発生したことから、試験が一時中断されている。

また9月8日に共同声明で安全性を重視する姿勢を示した9社の中にはアストラゼネカをはじめ、1億2000万回分の新型コロナウイルス向けワクチンを供給することで日本政府と合意している米ファイザーや、同じく4000万回分のワクチン供給で協議中の米モデルナなどが含まれている。

アストラゼネカの臨床試験の再開時期や、ワクチン開発企業による承認申請時期が遅れれば、日本政府のワクチン調達計画は、大幅な見直しに迫られることになりそうだ。

文:M&A Online編集部