JTB(東京都品川区)は新型コロナウイルス感染症拡大の影響で訪日外国人旅行者が激減しているため、日本人を対象に英語で観光案内を行うプライベートツアー(グループのメンバーだけで構成する旅行)事業に乗り出した。 

英語で観光案内する全国通訳案内士が全行程同行し、車窓の風景の案内や訪問観光地の説明などを英語で行う。 

これから英語を勉強したいシニア層や、語学留学を断念した高校生や大学生らの利用を見込んでおり、英語とともに日本語で補足説明し顧客の英語レベルに合わせて運用する。

コロナ禍を逆手に取った新しい取り組みだが、激減している訪日外国人旅行者の穴をどこまで埋めることができるだろうか。 

英語で日本の魅力を再発見 

今回のツアーはJTBで高品質旅行を専門に手がけるロイヤルロード銀座が運営する。顧客が、訪問する観光地や体験する内容などを決めるオーダーメード制で、訪日外国人旅行者の目線で日本の文化や歴史を再認識し、日本人でも知らない奥深い日本の魅力を味わってもらう。 

交通手段は新型コロナウイルス感染防止のため、45人乗りのバスに10席の独立型シートを設置したロイヤルロードが保有する大型バス・ロイヤルロードプレミアムか、提携会社が保有するトヨタ自動車の高級ミニバンであるアルファードクラスのハイヤーを使用する。 

神社と寺院の違いや、鳥居の役割、手水舎、絵馬、賽銭など訪日外国人旅行者向けの基本的な内容も説明するため、訪日外国人旅行者の目線で今までとは違った日本の魅力を再発見できる可能性があるという。 

M&Aでインバウンド事業を強化 

JTBは近年、グローバル化とインバウンド(訪日外国人旅行)事業強化のためにM&Aを積極化させていた。2008年に旅行商品の競争力強化を狙いにデンマークの旅行関連会社ツムラーレを買収し、2014年にはグローバル化強化のためスペインの旅行会社ヨーロッパムンドの株式の40%を取得した。 

さらに同年にはインバウンド事業強化のためシンガポールの旅行会社ツアーイーストを買収し、さらに2017年にはやはりインバウンド事業拡大を目的にハワイの旅行会社MC&Aを買収した。

JTBの沿革と主なM&A
1912 ジャパン・ツーリスト・ビューロー創立
1963 日本交通公社設立
2008 デンマークの旅行関連会社ツムラーレを買収
2014 スペインの旅行会社ヨーロッパムンドの株式譲受
2014 シンガポールの旅行会社ツアーイーストを買収
2017 ハワイの旅行会社MC&Aを買収

訪日外国人旅行者は2019年に約3188万人に達したが、2020年は7月までの累計で前年同期比79.9%減となっており、特に4月以降は落ち込みが大きく、4カ月連続で前年同月比99.9%減となっている。 

JTBの2020年3月期は売上高1兆2885億6900万円(前年度比5.8%減)、営業利益13億9300万円(同78.0%減)、経常利益25億4800万円(同15.5%減)、当期利益16億4900万円(前年度は赤字)だった。 

2021年3月期については現時点では合理的な算定ができないとして公表していない。新型コロナウイルスの影響でインバウンド事業はもちろん、国内外の旅行も大きな影響を受けており、厳しい決算は避けられそうにない。旅行と英語学習を組み合わせた新しい挑戦の成果は、どれほどだろうか。

【JTBの業績推移】単位:億円

  2018年3月期 2019年3月期 2020年3月期
売上高 13229.92 13673.96 12885.69
営業損益 51.35 63.27 13.93
経常損益 93.78 30.14 25.48
当期損益 10.43 △151.16 16.49

文:M&A Online編集部