2020年8月31日の米国株式市場で米アップルと、電気自動車(EV)を手がける米テスラの株価が急上昇した。この日は両社株が株式分割した後の初取引日で、株式分割調整ベースではいずれも自社の最高値をつけている。両社の同時実施で話題になった「株式分割」とは何か?

株式分割でも「企業価値」は変わらない

株式分割とは、文字通り1株の発行済株式を2株や3株などに分割すること。単純な整数倍だけでなく、1株を1.3倍や1.5倍といった具合に分割するケースもある。どれだけ分割するかは企業が自由に決めることができる。かつては100株分割も珍しくなかったが、上場企業だと株価の乱高下を招きかねないため、現在では5株以下のケースが主流だ。

既存の株主にとっては持ち株数が増える半面、企業価値は同じなので株価は分割しただけ下落する。理論的には1株を2株に分割すれば株価は半分に、3株に分割すれば3分の1に下落する。ただ、分割後に株価が上昇すれば、株主にとってはその分が含み益となる。たとえば1株1000円の株式が2倍に分割されても株価が600円なれば、既存株主が持っていた1株1000円の株が1200円に値上がりしたのと同じだ。

株式分割には高騰した株価を引き下げ、新たな投資を呼び込むという狙いもある。アップルは7月30日に1株を4株に、テスラも8月11日に5株に分割すると発表。両社株は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大による景気悪化にもかかわらず、株価が高騰していた。

新たな投資を呼び込む「成長余力」

分割前最終営業日と8月31日の終値比較でアップル株は499.24ドルから129.04ドルに、テスラ株は2213.40ドルから498.32ドルに。株式分割により値頃感が出たのを受けて、株式市場は「買い」一辺倒となった。

8月31日の出来高はアップル株が前営業日比4.81倍の2億2570万2688株、テスラ株が同5.89倍の1億1837万4406株の大商いに。まさに「投資家を増やす」という狙い通りに事が運んだ。既存株主も同日だけで実質的に持ち株がアップル株で3.4%、テスラ株で12.6%ほど値上がりし、企業・新規株主・既存株主にとって「三方良し」の株式分割になった。

株式分割は両社のように株価が上昇している企業が実施するケースが多く、上場からそれほど時間が経っていない新興企業で目立つ。歴史が長く安定期に入った「老舗」企業では、あまり例がない。それだけに株式分割を実施して株価が値上がりしたアップルとテスラは、投資家から「まだ新興企業並みの成長余力がある」と判断されたといえるだろう。

文:M&A Online編集部