シャープ<6753>と米アップルは、経営再建中のJDI<6740>から白山工場(石川県白山市)を取得する。譲渡総額は713億円で、土地と建物を412億円でシャープに、工場内の設備はアップルに301億円で売却する。だが、問題は今さら時代遅れの液晶を生産する白山工場を買う狙いだ。

液晶工場の買取は「動機」に乏しい

シャープは主力の液晶工場だった堺工場を液晶ディスプレーパネル市況の悪化から、堺ディスプレイプロダクト(SDP)として切り出し、持ち分法適用会社として独立させた。その後、子会社化する構想もあったが、液晶市場の競争過熱と有機ELディスプレーパネルの普及で液晶事業の成長が見込めないとして見送っている。つまり、今のシャープには液晶工場を買い取る動機がない。

一方、アップルも今年秋に発売予定の「iPhone12」シリーズでは全機種が有機ELを採用する見通しだ。2021年以降も液晶のままのモデルはスマートフォンの「iPhone SE」(第2世代)と生産継続が見込まれる「iPhone11」の2機種、それに最上位機種の「iPad Pro」を含む「iPad」シリーズだけになる。

「iPhone11」は2021年秋に「iPhone13」が発売されれば生産停止となり、「iPhone SE」も第3世代では有機ELになる可能性が高い。アップル製品の液晶需要は間違いなく先細りになる。アップルにとっても、液晶工場を買い取るメリットが見えないのだ。

とはいえ、シャープは台湾企業の鴻海精密工業(フォックスコングループ)傘下にあり、アップルは米国企業。経済産業省の要請でJDI救済のために白山工場を買い取るという「温情」など持ち合わせてはいないだろう。確実に「商機」は見出しているはずだ。

それを推測するには、両社が買い取った「資産」に注目する必要がある。シャープは土地・建物、アップルは設備を買い取った。要はシャープがほしかったのは「空間」であり、アップルがほしかったのは「液晶生産力」である。