2.コストの問題

航空機の燃費は新型の「ボーイング(B)787」で航空燃料1リットル当たり0.12km、国産ハイブリッド車「トヨタ プリウス」は39.0㎞。航空機は実に325倍の燃料を食う。とはいえ、B787は最大で395人乗り(国内線仕様)、プリウスは最大5人乗りなので80倍の輸送能力がある。1人当たりの燃費は4倍に縮まる。

しかし、これは離着陸が必要な一般の航空機の話。垂直離着陸機の燃費はケタ違いに悪い。ましてや航空燃料は税込で1リットル当たり64円前後と安い。倍以上も高いガソリンを使うと考えられる垂直離着陸機の空飛ぶクルマの燃費はいかばかりか。「ガソリン代がかかりすぎて飛べない」ようでは、緊急車両以外での実用化は難しいだろう。

燃費を改善するには、軽量化するしかない。燃費もさることながら、空を自由自在に飛ぶためにもクルマの軽量化は必須だ。そうなると高価な炭素繊維を採用するしかない。ただ、自動車のボディーに用いられる炭素繊維強化樹脂(CFRP)の価格は品質によるが、高いもので1㎏当たり7000円、1トンだと車体だけで700万円のコストがかかる計算だ。

「空を飛ぶ」機能を実装するだけでもカネがかかる。先行する空飛ぶクルマにはスロバキアの「Aero Mobil」(エアロモービル)があるが、「AeroMobil 4.0 STOL」は滑走が必要な純然たる飛行機にもかかわらず価格は120万から150万ユーロ(約1億5000万~約1億8000万円)もする。

同社は垂直離着陸が可能な「AeroMobil 5.0 VTOL」の開発も進めているが、価格は未定だ。ただ前モデルのAeroMobil 4.0 STOLよりも高くなるのは間違いないだろう。AeroMobil 5.0 VTOL同様の複雑な推進機構や軽量化を求められる垂直離着陸機の空飛ぶクルマで、価格が1億円を切るというのは絶望的に高いハードルだ。もちろん仮にそれを実現したとしても、一般に普及する価格帯には程遠い。

垂直離着陸機能がない「空飛ぶクルマ」でさえ1億円を超える(エアロモービル社ホームページより)