企業・事業の買収で基本合意しながらも、その後の交渉で条件が折り合わずM&Aを撤回したり、延期したりするケースがここへきて相次いでいる。

早くも前年水準に並ぶ

東証の「適時開示」ベースで調べたところ、1月だけで買収撤回が2件、延期が1件あった(24日現在)。2018年は年間を通じて、M&A撤回は3件(うち1件売却案件)に過ぎず、年明け以降の突出ぶりが目立つ。

東京産業<8070>は1月11日、重電向け部品販売のKDIグローバルマネジメント(横浜市)の子会社化を延期すると発表した。昨年11月の当初発表ではKDIの全株式を1月17日付で取得する予定だった。

東京産業は延期の理由について「株式取得の実行予定日(1月17日)までに、実行前提条件が充足されないことが明らかになった」としている。

横浜系ラーメン「町田商店」などを展開するギフト<9279>は17日、家系ラーメン「せい家」を都内中心に28店運営するトップアンドフレーバー(東京)の買収を断念すると発表した。子会社化に向けた資産査定デューデリジェンス)後の最終的な詰めの段階で合意に達しなかった。

ギフトは基本合意から1カ月後の昨年12月半ば、2019年1月1日とする子会社化の予定日を変更すると発表。しかし、妥協点が見いだせず、白紙撤回にいたった。買収金額で隔たりがあったとみられる。

さらに22日には、夢真ホールディングス<2362>がJSC(東京)からの建設技術者派遣事業の取得を中止することを決めた。昨年12月末に同事業の取得を公表後、ひと月も持たず、スピード“破談”に。この1件は断念したものの、夢真ホールディングスは昨年、国内2件、フィリピン1件の買収を手がけている。

〇2019年入り後 M&Aを撤回・延期したケース(東証適時開示ベース)

東京産業重電向け部品販売のKDIグローバルマネジメント(横浜市)の子会社化を延期
ギフト家系ラーメン「せい家」展開のトップアンドフレーバー(東京)の子会社化を中止
夢真HDJSC(東京)の建設技術者派遣事業の取得を中止

LIXILグループ、子会社売却が米CFIUSの承認が得られず

2018年を振り返ると、M&A撤回は3件あり、10月から11月に集中。ネット広告のセプテーニ・ホールディングス<4293>はオプトホールディングス<2389>傘下の韓国eMFORCE(ソウル)の子会社化を取りやめた。ヨシムラ・フード・ホールディングス<2884>は、市販薬や健康食品を取り扱う日水製薬医薬品販売(東京)の子会社化に向けた協議を中止した。

LIXILグループ<5938>はカーテンウオールなど建材製造のイタリア子会社の売却を断念した。前年の2017年8月に中国企業に対して約220億円で売却することで基本合意していたものの、米の対米外国投資委員会(CFIUS)から承認を得られなかったのが理由だ。

M&A取引では一般に、買い手の意向表明が対象企業に受理されると、基本合意書を交わす。続いて、買い手はビジネスや財務、法務など多方面のデューデリジェンスとともに、バリュエーション(買収価格の評価)を行う。これらを踏まえ、価格や買収についての最終的な条件を詰め、合意に達すれば、取引完了となる。

今年は1カ月足らずで、買収撤回・延期はすでに3件。2019年のM&A戦線は波乱含みとなるのかどうか。今後の推移が注目される。

文:M&A Online編集部