ベンチャーエンタープライズセンター(VEC、東京都千代田区)がまとめた2018年上期(1~6月)のベンチャーキャピタル(VC)による国内向け投資額は前年同期比15%増の708億円となり、2013年に現行の調査方式となって以降、5年連続で増加し、過去最高を更新した。5年前比べて2・5倍の水準で、スタートアップ企業に対して将来のIPO(新規株式公開)などに伴う高リターンを期待する投資マネーを引き寄せた格好だ。投資件数も651件と前年同期を28%上回り、過去最高となった。
「バイオ・製薬」のシェアが倍増
VECは四半期ごとに国内のVC(事業会社によるコーポレートベンチャーキャピタルを含む)による投資動向調査を集計している。今回の第2四半期(4~6月)調査には104社が回答した。第2四半期の国内投資額は321億2000万円で、前年同期比82億7000万円増加したが、第1四半期(前期)比では65億2000万円減少した。投資件数は297件で、前年同期比70件増、前期比では54件減。
第2四半期の国内投資を業種別にみると、「コンピューター及び関連機器、ITサービス」が33.3%とトップで、次いで「バイオ・製薬」21.6%、「工業、エネルギー、その他産業」11.3%、「半導体、電機一般」10.6%、「金融・不動産、法人サービス」8.8%などの順となった。なかでも、伸びが目立つのは「バイオ・製薬」で、第1四半期(11.8%)からシェアがほぼ倍増した。反対に、「ソフトウエア」は第1四半期の9.9%から2.4%にシェアが低下した。
ステージ別で「シード」期の比率高まる
スタートアップ企業の成長段階に応じたステージ別の投資動向(産業革新機構は除く)は以下のとおり。「アーリー」が47.8%(前期41.7%)、「シード」が23.3%(同20.5%)、「エクスパンション」が19.4%(同24.2%)、「レーター」が9.6%(同13.6%)。このうち事業の計画・準備段階にあたる「シード」のシェアが前年同期(17%)と比べ、6.3ポイント伸びており、投資資金が“最初期”のベンチャーに向かっていることがうかがえる。
第2四半期のステージ別投資動向(国内、除く産業革新機構)※回答のあった101社集計
ステージ | 金額(億円) | 比率(%) |
---|---|---|
シード | 47.4 | 23.3 |
アーリー | 97.3 | 47.8 |
エクスパンション | 39.5 | 19.4 |
レーター | 19.5 | 9.6 |
合計 | 203.7 | 100 |
「アーリー」は設立後、経営が軌道に乗り始める段階、「エクスパンション」は事業の本格展開から拡張段階、「レーター」はIPOを検討段階のベンチャーを一般に指す。
第2四半期に新規に組成されたファンドは10本、355億円だった。これにより、2018年上期の新規・追加出資の合計金額は1347億円となり、前年同期と比べ379億円増えた。
文:M&A Online編集部