次のM&Aの「標的」は仮想通貨か

半面、金融サービスは好調だ。2017年度決算では売上高が同12.5%増の3332億円、営業利益は同11.0%増の728億円の増収増益となっている。売上高・営業利益ともに祖業のネット通販に迫り、「主役交代」も近い。今年に入って損保買収に積極的なのも、その表れだろう。金融サービスはネット通販と違って物流が不要で、最大のライバルであるアマゾンが国内で手を出していない分野だ。

なにより生保・損保は契約者のライフサイクルとの関連度が高く、顧客情報が楽天のサービス全般に活用できる。たとえば新居が火災保険に加入すれば家電の需要が見込めるし、生保の満期時に証券などの金融商品や旅行などを提案すれば成約の可能性が高まるだろう。楽天グループ全体の波及効果は高く、今後は金融関連のM&Aが活発になりそうだ。

注目は仮想通貨だ。楽天の三木谷浩史社長は2018年2月にバルセロナで開かれた「モバイル・ワールド・コングレス」で、ブロックチェーン技術と既存の「楽天スーパーポイント」システムを組み合わせた「楽天コイン」を立ち上げる構想を明らかにした。

楽天がビットコイン決済代行サービスのビットネット(BitNet)の知的財産を取得し、電子商取引とフィンテックに関わるブロックチェーン技術を研究する「楽天ブロックチェーン・ラボ」を開設したのが2016年8月。技術的な基盤は整ったとみられる。仮想とはいえ、決済手段になる「通貨」だけにEC大手の楽天に失敗は許されない。本格的な仮想通貨を発行するに当たり、すでに運用実績がある仮想通貨会社を買収する可能性が高そうだ。

楽天がM&Aで「脱ネット通販」に舵を切ることで、アマゾンとは違う「土俵」での展開が可能になる。自分より強い相手と同じ土俵で戦わないのは「賢い戦略」だ。アマゾンも楽天市場同様、配送施設の拡充や物流コストの値上がりが負担になっているはず。違う土俵で戦うことで、アマゾンよりも高い成長を実現するのも夢ではない。楽天の経営は大きな変革期を迎えつつある。最近のM&Aからも、それが垣間見えるのだ。

2017年4月以降の楽天の動き

業種出  来  事
2017通信11月 プラスワン・マーケティングが「FREETEL」として運営する国内MVNO事業を承継
2018損保1月 野村ホールディングス傘下の朝日火災海上保険をTOBで完全子会社化すると発表
 損保3月 ペット保険を手がける、もっとぎゅっと少額短期保険を完全子会社化すると発表
 出版5月 国内出版取次3位の大阪屋栗田の第三者増資を引き受け、出資比率を51.0%に高めて子会社化すると発表
 IT6月 位置情報技術を開発するスタートアップの米カーブサイドを買収