江戸時代に大阪・道修町で産声を上げた武田薬品工業<4502>は、数々のM&Aによって成長し、フランス人社長が率いる世界企業となった。日本では過去最高額となる約6兆8000億円を投じるアイルランドの製薬会社シャイア―の買収にも自信たっぷりだ。

道修町生まれの企業を率いるフランス人社長

「私のコミットメントは利益率向上へのひたむきな取り組み、グローバル経費削減イニシアチブの遂行」。こう言い切るのは2018年4月に武田薬品のCFO(最高財務責任者)に就任したコスタ・サロウコス氏。2015年5月に武田薬品のEUCAN(ヨーロッパ・カナダ)ビジネスユニットのCFOとして入社する前は、アイルランドの大手製薬会社アラガンや米国の大手製薬会社メルクで財務の責任者を務めていた人物だ。

5月14日の決算説明会でわざわざ同氏を紹介し、利益率の向上、経費削減のミッションを宣言した背景には、3兆3500億円を借り入れて実施するシャイアーの買収がある。サロウコス氏は「現行の配当方針を支持、投資適格の格付け水準を堅持」といったコミットメントも披露しており、シャイアー買収について投資家の理解を得て、株価を維持したいとの強い思いが浮かび上がってくる。

5月14日の決算説明会ではクリストフ・ウェバー社長CEO(最高経営責任者)と、このサロウコス氏のほかに、チーフメディカル&サイエンティフィックオフィサーのアンドリュー・プランプ氏、ジャパンファーマビジネスユニットプレジデントの岩﨑真人氏の2人の合計4人が記者からの質問に応じた。日本人は岩﨑氏ただ1人であった。

武田薬品の経営を率いるエグゼクティブチームのメンバーは14人で、このうち日本人は3人という経営体制を考えると、このメンバー構成もなるほどとうなずける。

会見に臨んだ武田薬品の首脳。左端がコスタ・サロウコス氏、左から2人目がクリストフ・ウェバー氏、右端が岩﨑真人氏、右から2人目がアンドリュー・プランプ氏

武田薬品は237年前の1781年に長兵衛が現在の奈良県から大阪・道修町の薬種仲買商の「近江屋喜助」に奉公したあと、薬種商「近江屋」を開いたのが事業の始まり。当主は代々長兵衛を名乗り、近江屋長兵衛として商売を営んだ。現社長のクリストフ・ウェバー氏は九代目に当たる。

武田薬品のトップが創業家を離れたのは武田國男氏が長谷川閑史氏にバトンタッチした2003年。海外経験を持つ長谷川閑史社長はグローバル化を推し進め、1兆円規模のM&Aを実施し、規模の拡大に取り組んだ。その後任が2014年に社長に就任したフランス人のクリストフ・ウェバー氏だ。

同氏は2015年にトルコの製薬会社トプラム カリテを約145億円で買収したのを皮切りに、2017年には米国の製薬会社アリアドを約6310億円で買収。さらに2018年にはベルギーのバイオ製薬会社タイジェニックスを約700億円で買収した。そして2019年1月―6月の間に、日本企業では最高額となる約6兆8000億円を投じてアイルランドの製薬会社シャイアーを買収する。

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