日本M&Aレビュー 2022年 上半期|フィナンシャル・アドバイザー
2022年上半期(1-6月期)の日本企業が関与するM&A公表案件は8.6兆円と、前年同期比16.9%減少し2020年以来の低水準となった。1,000億円超の案件は総額4.9兆円、前年同期比29.7%減少。一方、案件数べースでは合計24件と14.3%の増加となった。日本関連の案件数は2,224件と前年同期比7.6%減少となった。
業種別で見ると、最も買収の対象となったのは工業で、総額2.8兆円、前年同期比132.5%増加となり、31.5%のシェアを占めた。2位はハイテクノロジーで前年同期比35.8%減少の2.4兆円となり、27.9%のシェア、3位は金融で1兆円に達し11.7%を占めた。
日本企業を対象としたフィナンシャルスポンサーが関与するM&A(海外・国内案件を含む)は、総額2兆円と前年から75.3%、案件数は7.8%(742件)増加し、金額及び件数ともに、1-6月期ベースで1980年の集計開始以来最高水準となった。これには、KKRが設立した買収目的会社のHTSKによる日立物流買収案件(7,686億円)、伊藤忠商事と投資ファンドの日本産業パートナーズ(JIP)によるHCJIホールディングスによる日立建機取得案件(1,825億円)が含まれる。
1-6月期のOUT-IN案件は、前年同期比44.2%増加の総額1.3兆円、2018年以来4年連続の増加となった。買い手の大半は米国で92.9%のシェアを占めた。これには前述のHTSKによる日立物流買収案件(7,686億円)、KKRの子会社で76株式会社の三菱商事UBSリアルティ買収案件(2,300億円)が含まれる。
一方、IN-OUT案件は、総額2.3兆円と前年同期比44.6%の減少となった。日本企業による米億投資は総額9,750億円で43%のシェアを占めたが、上半期比では57.2%減少となった。
海外企業の買収国ランキングでは、1位は米国、2位はカナダ、日本は前年の5位から8位に後退し、中国は13位となった。国内案件は、総額3.5兆円と、前年同期比5%減少となったが、過去10年で見ると2番目の高水準となった。
国内の首位案件となったのは、NTTとNTTデータによる海外事業再編案件(2,553億円)、4-6月期の国内サステナブル関連では、リニューアブル・ジャパン参加の合同会社RJ7号による日本再生可能エネルギーインフラ投資法人の取得案件(412億円)が発表された。
2022年上半期の日本関連公表案件ベースのM&Aリーグテーブルは、三菱UFJモルガンスタンレー証券が総額6兆円、案件数ベースではデロイトが合計142件で両者ともに前年の4位から順位を上げて首位となった。
順位 | ランク日 | 被買収側企業 | 被国籍 | ランクバリュー(億円) | 買収側企業 | 買国籍 |
1 | 2022年4月28日 | 日立物流 | 日本 | 7,686.0 |
HTSK | 日本 |
2 | 2022年1月31日 | バンジー | 米国 | 4,148.6 |
ソニー・インタラクティブエンタテインメント | 米国 |
3 | 2022年3月25日 | トレルボルグ・ホイール・システムズ・ホールディングAB | スウェーデン | 2,824.8 |
横浜ゴム | 日本 |
4 | 2022年5月9日 | NTTデータ 海外事業 | 日本 | 2,553.1 |
NTT | 日本 |
5 | 2022年3月18日 | GMクルーズホールディングス | 米国 | 2,490.4 |
ゼネラル・モーターズ | 米国 |
6 | 2022年3月17日 | 三菱商事UBSリアルティ | 日本 | 2,300.0 |
76株式会社 | 日本 |
7 | 2022年4月28日 | 日立物流 | 日本 | 2,219.8 |
日立物流 | 日本 |
8 | 2022年5月13日 | 近鉄エクスプレス | 日本 | 2,128.2 |
近鉄グループホールディングス | 日本 |
9 | 2022年3月22日 | コインチェック | オランダ | 2,090.7 |
サンダーブリッジ・キャピタル・パートナーズ | 米国 |
10 | 2022年5月16日 | ゴスホーク・アビエーション 航空機リース事業 | アイルランド | 2,034.7 |
SMBCアビエーション・キャピタル | アイルランド |
出典:Refinitiv(リフィニティブ)
本記事は、LSEG:Refinitiv 「日本M&A リーガル・アドバイザリー・レビュー」より許可を得て一部掲載しています。
M&A分野でも「東京一極集中」は揺るがない。東京都は大阪府を5倍以上引き離す。2021年は静岡が上位10に食い込む。下位グループは西日本に集中し、「東高西低」がくっきり。
2021年第3四半期(1-9月期)の日本関連M&A公表案件は16.7兆円と、前年同期から22.6%減少となったものの、1-9月ベースで見ると歴代3位の高水準となった。