増えるMBO|2021年のTOBプレミアム分析レポート

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1.2021年の国内TOB市場

TOB(株式公開買い付け)件数は3年連続で増加した一方で、金額は大型案件が乏しく大幅減に終わった。TOBでは業績が好調な子会社を完全子会社化して取り込む動きが目立つ。MBOで上場廃止を目指す企業も増えている。

TOBの目的で最も多かったのは完全子会社化の22件(31.4%)、次いでMBO(経営陣による買収)の19件(27.1%)だった。完全子会社化のうち12件(54.5%)が親子上場の解消だった。親子上場は少数株主の利益相反が懸念されており、今後も解消に向けたTOBが実施されることになりそうだ。

◆2021年に実施されたTOBの買付目的(内訳)

2.TOB件数と買付総額

2021年のTOB件数は前年比10件増の70件と、3年連続で増加した。2010年以降では最も多かった。新型コロナウイルス感染症の影響が長引き、先行き不透明な中でTOBによる経営規模の拡大や新規事業への進出を狙う企業が増加。金融緩和が続き、カネ余りでTOB費用を調達しやすい状況も件数増を後押ししている。

◆TOB件数の推移

(届出ベース、自社株買いは除く。非上場および不成立案件は含む)

一方、金額は同71.3%減の1兆8460億円にとどまった。これは前年に3兆円を超えるNTTによるNTTドコモの超大型TOBがあった反動減だ。前年は10件あった1000億円を超える大型TOBが4件と少なかったこともあり、金額では伸びなかった。

◆TOB買付総額の推移

(届出ベース、自社株買いは除く。不成立案件は除く)

3.TOBプレミアム

TOBの総プレミアム平均(公表日前3カ月平均株価、以下同)は同4.58ポイント増の37.39%と、4年連続の増加。一方、ポジティブプレミアム平均は同10.21ポイント増の46.33%と2年連続で増加している。

最もプレミアムが高かったのはTCSホールディングス(東京都中央区)が11月15日に露出計メーカーであるセコニックの非公開化を目的にTOBを実施すると発表した228.19%。

次いで日本製鉄が1月21日に東京製綱に対してTOBで持ち株比率を9.91%から19.91%へ引き上げると発表した109.50%、IT・ビジネス書を中心に出版事業を展開する秀和システム(東京都江東区)が3月23日に中堅家電メーカーの船井電機に対して完全子会社化を目的にTOBを実施すると発表した87.73%の順だった。

◆TOBプレミアム平均の推移

(届出ベースで集計。非上場および不成立案件は除く)

◆TOBプレミアムの水準

(届出ベースで集計。非上場および不成立案件は除く)

4.(内訳)MBO

MBOは前年比8件増の19件と、3年連続の増加となっている。10件を超えたのは2年連続で、2008年以降では過去最高の2011年(21件)に次ぐ高水準だった。一方で不成立も4件(光陽社、パイプドホールディングス、片倉工業、サカイオーベックス)あった。

MBOの不成立は2004年から2020年までに6件しかなく、昨年の4件は突出して多い。サカイオーベックスには物言う株主(アクティビスト)の村上世彰氏が同社株を買い付けて、市場株価がTOB価格を上回った。

特にPBR(株価純資産倍率)1倍割れの株式(1株当りの純資産が株価より高い)では、プレミアムを乗せても株主が「割安」としてTOBに応募しないケースが増えている。光陽社は50.35%のプレミアムをつけたが、その価格でもPBRは0.5倍程度だったため、株主に「割安」と判断され応募が進まなかった。

    経営陣が株主の意向や短期的な株価の動向に左右されない成長戦略を採用したり、TOBによる敵対的買収を回避したりするため、MBOによる上場廃止を目指す動きが出ている。さらに金融庁と東京証券取引所が2021年6月に企業統治指針(コーポレートガバナンス・コード)を改訂し、上場維持コストの上昇が懸念されている。そのため敵対的買収の懸念がなくても、東証2部の小規模企業などでMBOによる上場廃止の動きが続きそうだ。

    ◆MBO件数

    (届出ベースで集計。非上場および不成立案件は含む)

    5.(内訳)敵対的TOB

    前年同様に活発だったのが敵対的TOBで、過去最高だった前年と同じ5件に。成立したのは日本製鉄による東京製綱のTOB(1月22日届出)1件で、昨年よりも1件減った。SBIホールディングスによる新生銀行のTOB(9月10日届出)は経営陣の意見が反対から中立に転じたため敵対的TOBにはならず、成立した。

    ◆敵対的TOBの件数

    【集計範囲と対象】
    集計年度は毎年1月1日から12月31日を期間としている。基準日は公開買い付けが開始された日である。ただし自社株TOBは対象外とする。

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    データ・文:M&A Online編集部

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