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【2022会計年度】日本企業M&A公表案件ランキング
2022会計年度(4月-3月期)の日本企業が関与するM&A公表案件は総額16.7兆円と4年連続の減少となった。案件数は32件でこのうち15件を国内案件が占めた。トップアドバイザーは野村が2019年以来3年ぶりに首位となった。
2023年4月のM&A件数(適時開示ベース)は前年同月比3件増の73件となり、国内、海外案件とも堅調だった。1~4月累計は348件と前年同期を41件上回るハイペースで推移している。
一方、4月の取引金額は3126億円(公表分を集計)。海外企業を買収する1000億円台の大型案件が2つあったものの、これ以外に100億円超は1件(151億円)にとどまり、金額は伸び悩んだ。
小売業界では合従連衡の動きが表面化した。イオンは首都圏を地盤とする食品スーパーのいなげやを11月に子会社化することで合意した(金額は未確定)。
上場企業に義務付けられている適時開示情報のうち、経営権の異動を伴うM&A(グループ内再編は除く)について、M&A Onlineが集計した。
4月は新年度のスタートにあたることから例年、出足が鈍い。それでも今年の73件は4月として過去10年で2021年83件に次ぐ2番目の高水準で、産業界のM&A意欲の旺盛さを映した形だ。
73件の内訳は買収64件、売却9件(買収側と売却側の双方が発表したケースは買収側でカウント)。このうち国境をまたぐ海外案件は15件で、日本企業が買い手のアウトバウンド取引12件、外国企業が買い手のインバウンド取引3件だった。
海外案件を1~4月累計でみると、69件(アウトバウンド42件、インバウンド27件)。前年47件(アウトバウンド25件、インバウンド22件)を22件上回り、コロナ禍で落ち込んだ海外案件の回復傾向が顕著となった。2016年(208件)以来の7年ぶりに年間200件に乗せる勢いだ。
金額トップはオーストラリアの健康食品メーカー最大手、ブラックモアズを買収するキリンホールディングス。1692億円を投じて、全株式を8月中に取得する。主力のビール市場が縮小に向かう中、世界的に成長が見込まれる健康領域の事業拡大につなげる。ブラックモアズはオーストラリア証券取引所上場で、サプリメントを主力とする。
ブラックモアズはオセアニアをはじめ、東南アジア、中国に販売網を持ち、近年はインドにも展開している。キリンはブラックモアズを傘下に収めて、健康領域の品ぞろえを充実するとともに、免疫維持機能をうたうキリン独自素材「プラズマ乳酸菌」を中心にアジア・太平洋地域での販売拡大を目指す。
キリンは食領域、医領域に続く柱として健康領域を育成中。2019年には化粧品・健康食品大手のファンケルに3割出資し、持ち分法適用関連会社とした。
セガサミーホールディングスは、人気モバイルゲーム「アングリーバード」で知られるフィンランドのロビオ・エンターテインメントを1049億円で買収する。セガサミーとして過去最大の買収となる。ゲーム事業のポートフォリオを強化し、グローバル化を加速するのが狙い。ロビオはナスダック・ヘルシンキ市場の上場企業で、7〜9月の買収完了を見込む。
ロビオが手がけるモバイルゲームは累計50億ダウンロードに上る。なかでも2009年に発売した「アングリーバード」は世界的大ヒットとなり、ゲーム以外にアニメ、キャラクターグッズなど幅広いジャンルでブランド展開されている。
外食で久々に大型のM&Aが登場した。2020年に、コロワイドが定食チェーンの大戸屋ホールディングスを敵対的TOB(株式公開買い付け)を通じて子会社化(約62億円)して以来となる。
うどん専門店「丸亀製麺」などを運営するトリドールホールディングスは投資ファンドの英キャプデシア・グループと共同で、ロンドン証券取引所上場でレストラン事業のフルハムショアを買収することを決めた。151億円で全株式を9月までに取得する。フルハムショアは英国を拠点にピザ料理、ギリシャ料理の2業態で直営97店舗を持つ。
トリドールは国内外食市場の縮小を見据え、海外進出を重点課題に掲げる。現在、「丸亀製麺」を軸にアジアを中心に世界約30カ国で約700店舗を展開するが、2028年3月期までに4000店舗に増やす計画。1000億円のM&A予算枠を設定しており、その第一弾が今回のフルハムショア買収。今後、欧米、東南アジアで買収のアクセルを踏み込む構えだ。
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2022会計年度(4月-3月期)の日本企業が関与するM&A公表案件は総額16.7兆円と4年連続の減少となった。案件数は32件でこのうち15件を国内案件が占めた。トップアドバイザーは野村が2019年以来3年ぶりに首位となった。