2023年第1四半期に実施したTOB総額は3826億円|TOBプレミアム分析レポート

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1.2023年第1四半期のTOB総評

2023年第1四半期のTOB(株式公開買い付け)は件数が前年同期比1件減の17件に終わった。第1四半期としては2年連続の減少。一方で金額は同2倍超(102.12%増)の3826億8100万円と3年ぶりに増加に転じた。最も金額が高かったのは日本製鉄<5401>が3月13日に公表した日鉄物産<9810>に対するTOBの1070億2200万円。次いで住友電気工業<5802>が2月3日に公表した日新電機<6641>に対するTOBの762億2200万円、兼松<8020>が1月30日に公表した兼松エレクトロニクス<8096>に対するTOBの583億1800万円の順だった。

2023年第一四半期TOBの件数・金額推移

2.TOBの推移

第1四半期のペースのまま推移すれば、2023年通年では68件と前年の59件を9件上回るペース。だが、2010年以降は13年連続で第2四半期は第1四半期を上回っていない。第1四半期が同数の17件だった2017年は第2・第3四半期で失速し、通年では46件だった。今年も第2四半期の動向が注目される。

TOB件数の推移(届出ベース)

3.2023年第1四半期の注目トピックス

住友電気工業の日新電機、兼松による兼松エレクトロニクスなど、親子上場解消のためのTOBが目立った。その一つがオフィスでのコーヒーサービスやカフェ・レストラン事業を手がけるユニマットライフ<7560>が2月9日に、間接保有を含めると55.03%の株式を保有する子会社で高級家具販売を手がけるカッシーナ・イクスシー<2777>に対してTOBを実施して完全子会社化すると発表した案件。

高級家具市場は伸び悩んでおり、カッシーナ・イクスシーの2022年12月期は売上高が前期比20.6%減の90億9300万円と100億円の大台を割り込み、営業利益は同26.3%減の4億3300万円、純利益も同68.2%減の3億1200万円と低迷している。

ユニマットライフは完全子会社化により、両社共通の顧客である富裕層をターゲットに相互でサービス提供を推進し、新規顧客の獲得などでカッシーナ・イクスシーを支援する方針だ。

TOB件数と成否の推移

今年は第1四半期で早くもTOBの不成立があった。英投資ファンドのニッポン・アクティブ・バリュー・ファンド(NAVF)、マイケル・ワン・サウザンド・ナイン・ハンドレッド・トゥエンティ・ファイブ・エルエルシー、Hikari AcquisitionによるT&K TOKA<4636>に対する敵対的TOBがそれ。T&Kは紫外線(UV)硬化型インキでトップシェアを誇る。

3社はT&K株を合わせて22%強保有しており、発表前営業日の終値1217円に6.82%のプレミアムを加えた1株1300円で買い付け、株式保有比率を40〜44%に高める方針だった。期限を2日間延長したが、買付下限の約400万株に達しなかったため不成立に終わっている。

2023年第一四半期TOB買付目的の内訳

4.買収プレミアムの推移

第1四半期の買収プレミアム平均は1.06ポイント減の36.32%と、2年ぶりの減少。一方、ディスカウントを除いたポジティブプレミアム平均は2.53ポイント増の42.71%と、2年ぶりの増加だった。

TOB(買収)プレミアムの推移(2021-23)

5.買収プレミアムの分布水準

40%超の高プレミアム案件は全体の45%を占めた。前年同期は約15%だったので、3倍に増えたことになる。最も高率なプレミアムはコスモホールディングス(東京都千代田区)による岩崎電気<6924>の経営陣による買収(MBO)の86.30%、次いで日本製鉄による日鉄物産のTOBの80.83%、Odessa12によるメタップス<6172>のMBOの55.42%の順。

TOBプレミアムの分布(2018-2023/1Q)

【ご利用上の注意】
・2023年4月17日12時00分時点のデータです。
・2023年1月1日から2023年3月31日に公開買い付けが開始された案件を集計対象としています。ただし自社株TOBは対象外です。
・プレミアム算定に採用している株価は特に断りがない限り、公開日または基準日3カ月平均株価(終値)です。またプレミアムの算出は普通株式のみを対象としています。
・プレミアム算定に非上場企業、不成立、公開買い付け中の案件は含まれません。
本レポートに掲載されております情報は、内容及び正確さに細心の注意をはらい、万全を期しておりますが、人為的なミスや機械的なミス、調査過程におけるミスなどで誤りがある可能性があります。M&A Online(運営会社:株式会社ストライク)は当該情報に基づいて被った、いかなる損害についても一切の責任を負うものではありません。

データ・文:M&A Online

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