業界別M&A 動向レポート[調剤薬局業界]

調剤薬局業界では「業界全体のM&A動向」が「個別の薬局経営」に大きな影響を与えている。多くの薬局経営者と話をしていると「今まで通り経営していれば大丈夫」という考えを耳にするが、その状況はすでに大きく変わっていることをお伝えしたい。

生き残る薬局とそうでない薬局の差が生じる可能性が高い

業界再編が進み、より大きな企業が出てくることで、従来の調剤薬局にはなかったサービスが現れた。調剤薬局独自の生命保険を開発したり、遠隔地への医薬品の郵送を試みたり、中小規模では真似できないサービスが出てきている。現状は、医療機関との近さが他社との差別化要因であるが、新しいサービスが立地依存のビジネスモデルを覆す可能性もある。

大手はM&Aを進めて収益力を高め、新たなサービスを生み出そうと必死だ。業界再編により、今までになかったような患者様獲得の競争にさらされることとなり、生き残る薬局とそうでない薬局の差の拡大が予想されている。

きっかけは平成30年度の診療報酬改定(85%ルール)

5年後にこう振り返る経営者は多いだろう。診療報酬が改定され、薬局業界のM&A市場では売り手優位の状況に変化が見られた。大手調剤薬局チェーンの今年度四半期決算は前年比で最大8割近くも減益となった。これは85%ルール(集中率85%以上かつ4万回・40 万回/月以上の処方箋を受け付ける場合に基本料が低くなる)によるもので、大手の収益力が大きく制限された。 その結果、M&Aにおける買い手の主役が、大手から中堅規模の地場調剤チェーンに移った。

ある大手のM&A担当役員は「今までのように積極的な姿勢で買収を進めることが難しくなった」という。現に今年4月の報酬改定以降、大手からの魅力的な買収条件の提示が減り(特に買収金額が下落)、地場中堅薬局がより良い条件を提示する機会が増えた。