東証の「適時開示」ベースで、2018年12月の買収件数は63件で、前月を4件上回った。日立製作所はスイスの重電大手ABBの送配電事業を7140億円で取得するのを筆頭に、日本企業による海外M&Aは12件あり、全体のほぼ5分の1を占めた。香港投資ファンドへの傘下入りで事実上、“身売り”することになったパイオニアを含めて、1000億円以上の大型案件は4件あった。

一方、売却の開示件数は14件で、8月から5カ月連続で2ケタ台(1~7月は3月が11件。これ以外は1ケタ台)で推移し、市場環境の変化に合わせて事業の選択と集中を迫られている様子がうかがえる。

また、買収と売却を合わせた2018年のM&Aの総開示件数は(買収側と売却側の双方が開示したケースは買収側でカウント)は781件となり、前年を25件上回り、5年連続の増加となった。(年間まとめについては後日、掲載します)

日立、大正製薬の大型買収は年間トップ10入り

日立本社が入るビル(東京駅前)

東証の適時開示は上場企業に義務づけられた「重要な会社情報の開示」のこと。さまざまな開示情報の中から経営権の異動を伴う案件(子会社化・事業取得など。ただしグループ内再編を除く)についてM&A Online編集部が集計した。

12月開示された買収63件中、金額10億円を超えるのは13件あった(表参照)。なかでも1000億円超の大型案件は4件にのぼり、年間を通じて最も多かった。しかも、その2件が2018年の買収金額トップ10に入る。

突出したのは日立製作所。ABBから2020年前半をめどに分社される送配電事業会社の株式80.1%を約7140億円で取得し、連結子会社化すると発表した。これにより、送配電事業で世界首位に立つ。新会社発足から4年目以降に完全子会社化する。再生可能エネルギー市場の拡大や新興国での電力網の整備に伴い、送配電設備への需要は今後高まると予想されている。ABBの送配電事業の売上規模は約1兆1000億円。

大正製薬HD本社(東京都新宿区)

もう一つは大正製薬ホールディングス(HD)によるフランスの一般医薬院メーカー、UPSAの子会社化。買収金額は1823億円。大正製薬の売上高の約65%にあたる巨費を投じる。

UPSAは解熱・鎮痛・消炎薬や総合感冒薬などでトップブランド製品を持ち、業績は売上高541億円、営業利益99億円、純資産851億円。2019年6月下旬までにUPSAの全株式と関連業資産を取得する。大正製薬HDは日本と東南アジアを基盤とするが、今後、フランスを中心に東欧を含む欧州市場で一般医薬品事業を本格展開する。

NEC、電子政府分野を強化へ

年末も押し詰まった27日に飛び込んできたのがNECによるデンマーク最大手のIT企業KMDホールディングの買収。取得金額は約1360億円。KMDは中央・地方政府向け電子政府分野で強みを持つ。行政サービス向上やコスト削減に向けて注目される電子政府のビジネスモデルを獲得し、北欧から欧州全域への展開を目指す。

一方、パイオニアは香港投資ファンドのベアリング・プライベート・エクイティ・アジアの傘下に入り、再建を目指すことが本決まりとなった。ベアリングが第三者割当増資を引き受けるなどして1020億円を投じてパイオニアの全株式を取得し、早ければ2019年3月中に完全子会社化する。