2021年5月のM&A件数(適時開示ベース)は前年同月比2件減の68件となり、1月以来4カ月ぶりに前年を下回った。国内案件は堅調に推移したものの、海外案件が7件と前年(13件)に比べて半減した。取引金額はENEOSホールディングスによる1000億円超の大型案件を筆頭に総額2818億円(金額公表分を集計)と、前年の1391億円から倍増した。
全上場企業に義務づけられた適時開示情報のうち、経営権の異動を伴うM&A(グループ内再編は除く)について、M&A Online編集部が集計した。
5月のM&A総開示件数68件の内訳は買収50件、売却18件(買収側と売却側の双方が開示した場合は買収側でカウント)。このうち海外M&Aは7件(買収4、売却3)で、1月(8件)以来の1ケタにとどまった。
前月の4月(83件)に比べると、総開示件数は15件減った。4月として過去10年間で最多を記録した反動が出たことも考えられる。とりわけ、4月は海外案件だけで28件に上る盛況ぶりだった。
1~5月の累計では393件と前年同期を30件近く上回る。新型コロナウイルス感染症の流行拡大による経済環境の激変がM&A市場にとって追い風となっており、こうした基調に特段の変化は見られない。
金額首位はENEOSホールディングスがJSRからタイヤ素材のエラストマー事業を2022年4月をめどに買収すると発表した案件。買収金額は企業価値1150億円をベースに純有利子負債、運転資本などを調整したうえで確定するが、1000億円超が見込まれる。
世界的な自動車需要の拡大に加え、タイヤはガソリン車から電気自動車(EV)への移行など動力源や形態の変化にかかわらず必要とされることから、その素材となるエラストマー事業は今後も確実に成長が期待できる分野と判断した。
GMOフィナンシャルホールディングスは289億円を投じ、Zホールディングス傘下のFX(外国為替証拠金取引)会社、ワイジェイFX(東京都千代田区)を子会社化する。GMOフィナンシャルはFX国内最大手のGMOクリック証券(東京都渋谷区)を子会社に持つが、FXサービスの一層のシェア拡大を目指す。
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