2021年第1四半期 TOBプレミアム分析レポート

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1.2021年第1四半期のTOB総評

2021年第1四半期(1-3月)のTOB(株式公開買い付け)件数は24件で、前年同期比9件(60.0%)増と大幅に増加した。2010年以降の第1四半期としては、2013年の27件に次ぐ2番目の水準。前四半期(2020年第4四半期)と同じ高水準を維持し、TOBの活況が続いている。

2-1.TOB件数の推移

第1四半期(1Q)としては2018年から3年連続の増加(2019年と2020年は同数)だった。この水準で推移すれば年間100件近いTOBが行われる計算で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の第3波による緊急事態宣言下にもかかわらず、取引は活発に推移している。

◆表1 TOB件数の推移(届出ベース、公開買付開始日が2021年1月1日~3月31日 非上場および不成立案件含む)

TOB件数の推移
*積上グラフは下から第1四半期(水色)、第2四半期(黄色)、第3四半期(灰色)、第4四半期(緑色)

2-2.TOB成否の推移

TOB不成立は2件で全体の8.3%だった。不成立は2月4日に旧村上ファンド系の投資会社シティインデックスイレブンス(東京都渋谷区)が正式発表したMBO(経営陣による買収)中の日本アジアグループ<3751>に対するTOBと、2月9日にサカイオーベックスが発表した株式非公開化を目的とするMBO。

進行中も2件で、1月27日にフリージア・マクロス<6343>が発表した持ち分法適用会社化を目的とする日邦産業<9913>に対するTOBと、3月8日に光陽社<7946>が発表した株式非公開化を目指すMBO。

◆表2 TOB成否の推移(届出ベース、非上場および不成立案件含む)

TOB成否の推移

2-3.MBO件数の推移

MBO件数は7件と前年同期を2件(対前年同期比40.0%増)上回った。件数では2020年の通年実績の3分の2近い高水準でスタートを切ったが、TOB全体に占める割合は29.1%と前年同期(33.3%)を4.2ポイント下回っている。

◆表3 MBO件数の推移(届出ベース、非上場および不成立案件含む)

MBO件数の推移

3.2021年第1四半期の主なTOB

◆表3 話題となったTOB(買収プレミアムは3カ月平均株価で算出)

対象企業名 買付者 プレミアム 成否
東京製綱 日本製鉄 105.85% 成立

1月21日に日本製鉄<5401>が東京製綱<5981>に対して、持ち株比率を9.91%から19.91%に引き上げるTOBを発表。東京製綱は2月4日に反対意見を発表し、敵対的TOBにもつれ込んだ。東京製綱は「株主を含む当社のすべてのステークホルダー(利害関係者)の共同の利益に対して将来的に影響を与え続ける」などとしてTOBに応募した株主に契約の解除を要請したが、3月9日に成立した。

日本を代表する伝統的大企業である日本製鉄による敵対的買収であったこと、TOBに至った背景として対象者である東京製綱の業績不振とコーポレートガバナンス不全が指摘されたこと、TOBにもかかわらず取得割合がトータルでわずか19.9%にとどまったことが注目された。

対象企業名 買付者 プレミアム 成否
日本アジアグループ シティインデックスイレブ
ンス
48.32% 不成立

2020年11月初めから山下哲生会長兼社長が米投資ファンドのカーライル・グループと組んでMBOを実施中だった日本アジアグループに対し、シティインデックスイレブンスが全株式取得を目的に対抗TOBに乗り出した。

シティは共同保有者分と合わせて日本アジア株式の20.47%を所有しており、MBOの買付価格600円が不当に安く、株主の利益を犠牲にしていると指摘。2021年1月半ばに1株840円で対抗TOBを始める方針を明らかにしていた。MBOを主導するカーライル側は1月下旬に買付価格を600円から2倍の1200円に引き上げていた。

これに対してシティは買付価格1210円でTOBを開始。日本アジアは買収防衛策の「クラウンジュエル」を発動し、1株当たり300円の特別配当を発表した。特別配当総額は約82億円と同社純資産52%に相当するため、シティは3月3日にTOBを撤回した。

4.買収プレミアム(TOB)の推移

総プレミアム平均は36.20%で、前年同期(31.40%)を4.8ポイント上回っている。ポジティブプレミアム平均は47.83%で、前年同期(34.16%)を13.67ポイント上回った。プレミアムの最高は日本製鉄の東京製綱に対するTOBの105.85%。最低は1月20日にLINEが発表したZホールディングス<4689>に対するTOBの-46.3%だった。

◆表4 買収プレミアムの推移(非上場および不成立案件を除く)

年度 総プレミアム平均 n=18 ポジティブプレミアム平均 n=16
2014年 25.40% 36.70%
2015年 29.20% 39.90%
2016年 26.36% 40.85%
2017年 23.32% 34.90%
2018年 26.65% 35.76%
2019年 32.64% 35.05%
2020年 32.81% 36.12%
2021年1Q 36.20% 47.83%

5.買収プレミアム(TOB)の分布水準

◆表5 TOBプレミアムの構成比(非上場および不成立案件を除く)

【ご利用上の注意】

・2021年5月17日18時00分時点のデータである。
・2021年1月1日から2021年3月31日に公開買い付けが開始された案件を集計対象としている。ただし自社株TOBは対象外である。
・プレミアム算定に採用している株価は特に断りがない限り、公表日前3カ月平均株価(終値)としている。
・プレミアム算定に非上場企業、不成立、公開買い付け中の案件は含まれない。

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データ・文:M&A Online編集部

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