新生銀行の運命は?「敵対的TOB」件数が過去最高で推移

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[追記 新生銀行は11月24日夕、SBIによるTOBに対する意見を従来の反対から中立に変更し、これに伴い25日に予定していた臨時株主総会の中止を発表しました]
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敵対的TOB(株式公開買い付け)の件数が過去最高水準で推移中だ。1月からの累計は6件で、今年の全TOB(59件、届け出ベース、11月24日時点)の1割を占める。前年の敵対的TOB件数は5件を数え、2007年と並ぶ13年ぶりの高水準だったが、これをすでに上回る。

2019年から増勢に転じる

TOBが発表されると、対象企業は10営業日以内に賛成、反対、中立、留保などの意見表明を行わなければならない。そのほとんどは対象企業が賛成する形で友好的に株式の買い付けが行われる。反対だと、敵対的TOBが確定する。

日本で敵対的TOBは長らくタブー視されてきた面がある。国内初の買収防衛策発動で知られる「ブルドックソース事件」があった2007年の5件をピークに、以降は年に1件あるかどうかで推移してきた。

ところが2019年の3件を境に増勢に転じた。コーポレートガバナンス意識の高まりで企業価値の最大化が一層求められるようになったのに加え、世界的なカネ余りを背景に物言う株主の動きが活発になっている。

日本製鉄も「敵対的」を手がける

今年、敵対的TOBに発展した6件(一覧表)のうち、成立したのは日本製鉄の東京製綱に対する1件だけで、4件は不成立に終わった(残る1件は進行中)。

日本製鉄は約9%の保有割合を19%余りに引き上げ、発言権を増すことを狙いとしたものだったが、経営への介入を嫌う東京製綱が反発。この一件では産業界の盟主的存在の日本製鉄が敵対的TOBに踏み切ったことで大きな注目を集めた。

◎2020年:敵対的TOB一覧

公表月 公開買付者 対象企業 成否
1月 日本製鉄 東京製綱 成立
フリージア・マクロス 日邦産業 不成立
2月 シティインデックスイレブンス(※) 日本アジアグループ 不成立
4月 米スターウッド・キャピタル・グループ インベスコ・オフィス・ジェイリート 不成立
アスリード・キャピタル(シンガポール) 富士興産 不成立
9月 SBIホールディングス 新生銀行 進行中

※シティインデックスイレブンスは4月に再度TOB(この時は日本アジアグループが賛成)を行い、成立。

新生銀行とSBI、株主の支持はどちらに?

11月25日は今年のTOB戦線で最大のハイライトを迎える。インターネット金融最大手のSBIホールディングスによるTOBに反対する新生銀行が都内で臨時株主総会を開き、買収防衛策の発動の賛否を問う。銀行業界で初の敵対的TOBに発展した両者の攻防が雌雄を決するのだ。

SBIは日本長期信用銀行を前身とする新生銀行の20%強の株式を持つ筆頭株主。9月初めに、TOBを通じて保有比率を最大48%に引き上げ、連結子会社化することを発表した。SBIが進める地銀連合による「第4のメガバンク構想」の中核として新生銀行を傘下に取り込むことを狙った。

これに対し、新生銀行は対抗措置として買収防衛策の導入を決定。SBI以外の株主に新株予約権を無償割り当てし、SBIの株式保有比率を下げるもので、この手法はポイズンピル(毒薬条項)と呼ばれる。

25日の臨時株主総会は新生銀かSBIのどちらが株主の支持を得られるかの一点にかかっている。SBIは買収防衛策の発動が可決されれば、TOBを撤回する意向を表明しているが、採決を左右しそうなのが約2割の株式を持つ国の判断だ。

国が新生銀の買収防衛策に反対すれば、SBIに勝利が転がり込む公算が大きい。TOBは12月8日までだが、買付価格2000円が新生銀の株価(24日の終値1958円)を上回る状況が続けば、TOB成立が有力となる。

文:M&A Online編集部

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