モンゴル最有力のハーン銀行を傘下に持つ澤田ホールディングス(HD)に対するTOB(株式公開買い付け)が新局面を迎えた。澤田HDが23日、TOBに反対する意見表明を発表した。

このTOBは今年2月に始まり、延長が繰り返されてすでに150日(営業日ベース)に及ぶ異例のロングランとなっているが、敵対的TOBの構図がはっきりしたことで、どんな結末が待ち受けているのか?

モンゴル中央銀行の「事前承認」は?

澤田HDにTOBを実施しているのは投資ファンドのMETA Capital(東京都港区)が組成したウプシロン投資事業有限責任組合。約208億円を投じて、50.1%の株式を取得して子会社化することを目指している。

しかし、そもそも2月に始まったTOBにもかかわらず、なぜ今も継続しているのか。

澤田HDの中核子会社はモンゴルのハーン銀行で、2003年に国際競争入札によって傘下に収めた(持ち株比率は約54%)。焦点となっていたのが支配株主の変更に伴うモンゴル中央銀行の事前承認の可否だ。

ウプシロン側は事前承認の取得に向けて対応中とし、TOBの期間を小刻みに15回延長。澤田HDはTOBに対する賛否を見送り、意見を留保したままだった。

ところが、ここへきてモンゴル中央銀行が支配株主の異動について事前承認を与えないとの判断を下したという。澤田HDによると、9月15日付でハーン銀行がモンゴル中央銀行から通知文書を受け取った。これを受けて、澤田HDは23日開催の取締役会でTOBに反対することを正式に決議した。

TOB成立の可能性、否定できず

澤田HDが最も危惧しているのはモンゴル中央銀行から事前承認が得られないままTOBが成立することだ。ハーン銀行への議決権を停止されるおそれがあり、その場合にはハーン銀行が連結範囲から外れ、澤田HD自体の企業価値が大きく毀損するのは必至だ。

ハーン銀行は個人・中小企業などのリテール分野でモンゴル最大の銀行。今や澤田HDの連結売上高の8割超を占める。

実はTOBが成立する可能性は捨てきれない。9月24日の澤田HD株価の終値は853円。買付価格の1050円を200円近く下回ることから、多くの株主にとって市場で売却するよりもTOBに応募した方が有利な状況にあるからだ。

買収側の妙味は薄れるばかり

旅行大手のエイチ・アイ・エスの創業者で現会長兼社長の澤田秀雄氏が協立証券(現澤田HD)を買収し、金融証券事業に参入したのは1999年。澤田HDは現在、ハーン銀行をはじめ、キルギスコメルツ銀行(キルギス)、エイチ・エス証券、エイチ・エス債権回収などを傘下に置く。

澤田HD筆頭株主で会長の澤田氏は保有する全株式(資産管理会社保有を含めて約30%)をTOBに応募する契約を交わしている。このことは澤田氏が自身の名前を冠した澤田HDの経営からの離反を意味する。

見切り発車同然に始まり、その挙句、敵対的TOBの構図となった今回の迷走劇。TOBの期限は現時点で10月6日(153営業日)だが、買収側の妙味が日に日に乏しくなっていることを考えれば、ぎりぎりで撤回の可能性が高まってきた。

◎澤田HD:傘下の主要企業 

ハーン銀行(モンゴル) 2003年、国際競争入札を通じて子会社化
キルギスコメルツ銀行(キルギス) 2017年、子会社化
ソリッド銀行(ロシア) 2012年、持ち分法適用関連会社に
エイチ・エス証券 2006年に設立(旧協立証券が母体)
エイチ・エス債権回収 2006年に設立
外為ドットコム 2005年、持ち分法適用関連会社に。FX取引
iXIT2015年に子会社化(旧インデックス)。デジタルコンテンツ配信

文:M&A Online編集部