終わりが見えない超ロングランのTOB(株式公開買い付け)が進行している。エイチ・エス証券やモンゴル最大手のハーン銀行などを傘下に持つ澤田ホールディングス(HD)に対するTOBは買付期間が12回延長され、すでに126日に及ぶ。

さらに延長が繰り返される見通しで、今年3月に不成立に終わったユニゾホールディングスをめぐるTOBの140日間を超え、最長記録を更新することが必至だ。 

TOB開始からすでに半年

澤田HDにTOBを実施しているのは投資ファンドのMETA Capital(東京都港区)が設立したウプシロン投資事業有限責任組合。株式の50.1%を取得して子会社化するのが目的で、2月に1株1050円で澤田HD株の買い付けを始めた。買付代金は約208億円。当初の買付期間は2月20日から3月19日までの20営業日だった。

ウプシロンが提出した訂正公開買付届出書によると、理由はこうだ。澤田HDの中核子会社の一つ、ハーン銀行はモンゴル最有力。TOBで支配株主が変更になることから、モンゴル中央銀行の事前承認が必要となるが、その手続きが今も終わっていないという。

こうした状況では株主としても動くに動けないのはもちろん、買付者自身にも多大なリスクが生じかねない。ウプシロンは8月12日までに小刻みに12度目の期間延長を発表。買付期間は現時点で8月26日までの126日となっている。

金融商品取引法上、どうかというと、TOBは原則、20営業日以上60営業日以内。ただし、買付期間の短縮や買付価格の引き下げといった応募株主に不利となる条件変更は禁止されているものの、買付期間の延長などについては特に規定がない。

5月に始まった介護大手、ニチイ学館のMBO(経営陣による買収)を目的としたTOBも3度延長され、68日(8月17日まで)となっており、60日を超えることは珍しくない。だた、100日以上となると、話は別だ。 

ユニゾ騒動では最長の140日及ぶ

そこで思い出されるのは不動産・ホテル業のユニゾホールディングスをめぐる一連のTOB騒動。ソフトバンクグループ傘下の米投資会社フォートレス・インベストメント・グループによるTOBは昨年8月から今年3月まで7カ月にわたり14度延長され、営業日にして140日に及んだ。 

 ユニゾ株価が買付価格を上回る高値で推移していたことに加え、渦中にあった当事者のユニゾが従業員による買収(EBO)という対抗措置(非公開化)に出たことなどで、過去にない異例の持久戦にもつれ、最終的にユニゾ側が勝利した。 

ユニゾをめぐっては複数の買付者による価格の引き上げ合戦が見られたが、澤田HDの場合、買付価格が株価を上回っているため、本来であれば、多くの株主には市場で売却するよりもTOBに応じた方が有利な状況。13日の澤田HD株の終値は902円で、買付価格に対して150円程度開きがある。

TOB維持か中止か、迫られる判断

そもそも、なぜ澤田HDへのTOBが見切り発車同然に始まったのか。同社は社名から分かるように、旅行大手のエイチ・アイ・エス(HIS)創業者の澤田秀雄氏が約26%を保有する筆頭株主で会長を務める。澤田氏は全保有株式をTOBに応募する意向だ。

当の澤田氏は保有する澤田HD株の約8割について担保権を設定している。TOBを性急に進めた背景には澤田氏自身に何らかの資金ニーズが発生したとの見方も成り立つ。

実は、一連のユニゾ騒動の発端となったのは他でもないHIS。昨夏、HISがユニゾに仕掛けた敵対的TOBは失敗に終わり、その後、複数の米系ファンドを巻き込んでユニゾ争奪戦に発展したが、ここでも澤田氏がキーマンとして関わっていたのだ。

いずれにせよ、澤田HDに対するTOBが着地点が見えないまま際限なく続くようであれば、株主軽視のそしりは免れない。TOBの維持か中止か、早晩判断を迫られることになりそうだ。

文:M&A Online編集部