異例の防衛策に司法判断へ、日本の買収ルール不備の声も

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[東京 26日 ロイター] - 東京機械製作所が発動を目指す強硬な買収防衛策は認められるのか。会社側の同意がないまま買収を仕掛けられるケースが相次ぐ中、東京地裁が今月末にも下す判断によっては、企業が防衛策を発動するハードルが下がる可能性がある。

新聞輪転機大手の東京機械は22日に開いた臨時株主総会で、投資会社アジア開発キャピタルに対する買収防衛策発動の是非を諮った。アジア開発は6月から市場で東京機械株を買い集め、今では約4割を保有する筆頭株主。東京機械はこの比率を引き下げようと、既存株主に新株予約権を割り当てる防衛策「ポイズンピル(毒薬条項)」の発動を計画している。

総会では賛成多数で東京機械の提案が承認されたが、今回異例だったのは、利害関係者だとしてアジア開発の議決権行使を認めなかったことだ。アジア開発は差し止めを求める仮処分を東京地裁に申し立てており、東京機械が実際に防衛策を発動できるかどうかは司法判断を待つことになる。

議決権行使比率の向上支援などを手掛けるクエストハブの渡辺拓未執行役員は、会社側が議決権を行使できる株主を恣意的に選ぶことが許容されれば、「絶対に勝てる株主構成をピッキングして、理屈をつけて強引に(防衛策を)導入することが可能になる」と指摘する。一方で、地裁の決定には「買い主の属性、いわゆる乱用的買収者かどうかという判断なども絡むので、そこが話を複雑にしている」と話す。

クエストハブは、今回の案件で東京機械、アジア開発のいずれとも取引関係にはない。

アジア開発は、一部の株主の議決権行使を制限・排除する決議は「一株一議決権の原則、株主平等原則に反し、違法」だとしている。さらに、東京機械の一部役員の出身母体である損害保険ジャパンなど、取引関係にある大株主には議決権行使が認められたことに疑問を呈している。

日本は「中途半端」

日本の買収防衛策はこれまで、敵対的な買収者が実際に現れる前に導入しておく事前警告型が主流だった。しかし、経営陣の保身につながるとして機関投資家からの賛同を得づらくなり、廃止する企業が続出。株主関連活動支援会社のアイ・アールジャパンによると、導入企業は2008年の579社をピークに現在半減している。

事前警告型が選択肢から消える一方で、敵対的買収の増加に伴い目立ってきたのが、特定の買収者を標的とした有事型だ。東芝機械(現・芝浦機械)が旧村上系ファンドの投資会社による買収に対して昨年取り入れて以降、少なくとも5社が導入、もしくは導入を検討している。SBIホールディングスが株式公開買い付け(TOB)をしている新生銀行も、計画している1社だ。

ただ、東京機械のケースについては、株式の大量買い付けに関する制度上の不備によって生じた特殊な例という指摘もある。アジア開発は、買収の目的や買付価格を明らかにしたTOBを実施しないまま、市場内で一気に4割近くの東京機械株を買い集めた。制度上認められた行為ではあるものの、東京機械が株主の意思を確認するための総会を開く基準日を設定する前の段階で、過半の賛同を得られる見込みはほとんどなくなっていた。

専門家は、市場内で株を買い集めて経営権を握るような敵対的買収者が突如現れた場合、一般株主が少数株主として取り残されることを懸念し、売り急ぐ可能性があると指摘する。

企業の合併・買収(M&A)の法務に詳しい柴田堅太郎弁護士は、特定標的型の買収防衛策について、一般株主の退出を促すような強圧的な買い付けを行おうとする敵対的買収者が現れた場合に、「買収者についての情報を評価する機会を株主に提供し、その上で株主がこの買収を承認するかどうかを決めるという枠組み」と解説する。

国外に目を転じると、英国は30%以上の株式を取得する場合はTOBを実施し、応募のあった全株式の買い取りが義務付けられている。米国では市場内で買い集めて買収することが可能だが、取締役会決議だけで対抗措置を発動することができる。早稲田大学大学院経営管理研究科の鈴木一功教授は「日本の場合は中途半端」と指摘する。

海外投資家の間では、日本の買収防衛策が相次ぐことについて、「むやみに導入されていた状況がようやく改善されつつあったのに」(香港のファンドマネジャー)と警戒感が強い。

東京機械側の意見書を書いた東京大学社会科学研究所の田中亘教授は「防衛策はあくまでも次善策。本筋は公開買い付け規制を整備するべき」と指摘する。その上で、「市場内買い付けについても規制に含めて良いのではないか」としている。

(山崎牧子 取材協力:新田裕貴 編集:久保信博)

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