急増する上場企業のMBO、半年で前年に並ぶ11件

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MBOは株式市場からの退出を意味する…(写真は東京証券取引所)

2021年の上場企業によるMBO(経営陣による買収)が11件となり、半年足らずで前年の件数に並んだ。このままのペースでいけば、年間件数は2011年以来10年ぶりに20件を超える勢いだ。ただ、投資ファンドが介在するケースは前年5件だったのに対し、今年は現時点で3件にとどまり、その分、比較的小型のMBO案件が目立つ。

今年はMBOの割合が3割近くに

上場企業のMBOは通常、TOB(株式公開買い付け)を通じて行われ、株式の非公開化を目的とする。オーナー家出身の経営陣が主導するケースが多い。

2020年のMBOは年間11件を数え、2011年(21件)以来の2ケタに乗せたが、こうした流れは今年に入ってさらに加速。業務用家具・インテリアメーカーのオリバー(東証1部)が6月22日、MBOで株式を非公開化すると発表し、早くも11件と前年に追いついた。

今年のTOB件数は現在38件で、このうちMBO案件が3割近くを占める。前年のMBOは全60件のTOB中、約2割だったのに比べ、そのウエートが上昇している。

オリバーは国内投資ファンド大手のインテグラル(東京都千代田区)と組んでTOBを実施し、すべての自社株式取得を目指す。買付代金は最大385億円で、今年のMBOとしてEPSホールディングス(医薬品開発の治験支援、東証1部)の約625億円に次ぐ2番目の規模。また、投資ファンドが関与するMBOとしては今年最大となる。

株式市場からの「退出」を意味するMBOを決断する理由は何か。短期的な業績変動や株価動向、株主の要求などにとらわれず、中長期的な視点から経営課題に対処するためには非公開化が望ましいとの判断だ。さらに金融緩和も追い風となっている。

従来、MBO資金の手当ては銀行借り入れで賄うことが多かったが、最近は潤沢な待機資金を持つ投資ファンドと連携するパターンが増えている。

大型案件、投資ファンドが関与

2020年のMBOをみると、投資ファンドと組んだケースは11件中、5件と半数近かった。投資ファンドがかかわった案件はいずれも160億~1000億円の大型案件(MBOが不調に終わった1件を含む)だった。

2021年は現時点で11件のMBO中、3件に投資ファンドが関与し、買付代金はオリバーの約385億円を筆頭に、米ベインキャピタルと組むイグニス(婚活サイト運営、マザーズ)の約263億円、米カーライル・グループと組むAOI TYO Holdings(テレビCM制作、東証1部)の約213億円が続く。

上場企業をめぐっては2022年4月に東京証券取引所の市場再編を控え、流通株式時価総額や株主数の基準が厳しくなる。中堅クラスの企業にとっては上場維持のためのハードルが高まる一方、物言う株主の台頭などにより、上場メリットが薄らいでいる状況があり、7月以降の後半戦にMBOがさらに増勢をたどる可能性がある。

今年のTOB38件のうち不成立に終わったのは4件。この半数の2件はMBO案件が占める。

◎2021年MBOの一覧(JQはジャスダックの略)

公表月 社名 上場先 成否
2月 名古屋木材 名証2部 成立
ビーイング JQ 成立
大成 名証2部 成立
サカイオーベックス 東証1部 不成立
3月 イグニス マザーズ 成立
光陽社 東証2部 不成立
ニッパンレンタル JQ 成立
5月 ファミリー JQ 成立
AOI TYO Holdings 東証1部 進行中
EPSホールディングス 東証1部 進行中
6月 オリバー 東証1部 進行中

文:M&A Online編集部

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