TOB「不成立」の連鎖? 出光興産の東亜石油案件も不調に終わる

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出光興産の本社前(東京・大手町)

出光興産は16日、上場子会社の東亜石油の完全子会社化を目指して実施したTOB(株式公開買い付け)が不成立に終わったと発表した。東亜石油の株価は年明け以降、出光が提示した買付価格2450円を上回る高値が続き、TOB成立が困難な情勢にあった。TOB最終日である15日の東亜石油株の終値は3010円だった。

TOB不成立が年初から3件続く

東亜石油株をめぐっては米投資ファンドのコーンウォール・キャピタル・マネジメントが買い増しを続け、持ち株比率が25%余りに達し、こうした対抗勢力が市場の高値を誘ったとみられる。 

実はTOBの不成立はこの1カ月間で3件目というハイペースだ。今年1月に京阪神ビルディングに対する旧村上ファンド系投資会社の敵対的TOBが頓挫し、2月初めには日本アジアグループによるMBO(経営陣による買収)目的のTOBが失敗に終わった。

さらには島忠争奪戦を巡っては昨年12月にもDCMホールディングスのTOBが不成立となり、対抗TOBを仕掛けたニトリホールディングスが勝利し、島忠を傘下に収めたことが記憶に新しい。 

TOBは2016年1月以降の5年間で260件余りあるが、このうち不成立は今回の出光興産による東亜石油の案件を含めて11件に過ぎない(一覧表)。にわかにTOB不成立の“連鎖”が起きた形だ。 

市場価格が買付価格を500円上回る

東亜石油は昭和シェル系の石油精製会社。出光興産と昭和シェルが2019年に経営統合したのに伴い、現在は出光興産が50%強を保有する。TOBを通じて持ち株比率を100%に引き上げ、経営の効率化や意思決定の迅速化を狙った。背景にあるのはエコカーの普及や脱炭素化に伴う石油消費の減少など市場環境の変化だ。 

TOBの成否を握る最大の要因は株価。買付価格が当該企業の株価(市場価格)を上回っていれば、株主はTOBに応じた方が儲けにつながる。反対に、株価が買付価格よりも高ければ、市場で売却した方が有利となる。

出光興産による東亜石油株の買付価格は1株につき2450円で、当時の株価に約23%を上乗せした水準だった。買付代金は最大約152億円。買い付けは2020年12月16日に始まったが、2500円程度だった株価は年明け後に上昇を続け、2月初めに3000円台に届いた。

背後に見え隠れしたのが米投資ファンドのコーンウォールだ。2月初めに東亜石油株の持ち株比率が25%に達したことが大量保有報告書で判明した。一時はコーンウォールによる敵対的TOBの観測も浮上したほどだ。

30年ぶりの株高がTOBの足かせに?

こうした中、注目されたのが出光興産が買付価格を引き上げるかどうか。結局は買付期限を当初の2月2日から同15日に延長したものの、買付価格をいじることはなかった。出光興産のTOBに応じた株数は約47万株で、成立条件だった205万株(買付予定数の下限)にも遠く及ばなかった。

日本株はといえば、ここへきて3万円の大台を回復し、30年ぶりの高値に沸いている。現在進行中のTOB案件は約20件を数えるが、株価の急上昇が思わぬ足かせになる可能性が出てきた。

◎2016年以降:TOB不成立の一覧(年はTOB開始時期に基づく)

買付者 対象企業(経営陣の意見)
2016
2017 富士通 ソレキア(賛成)
オーシャン 東栄リーファーライン(賛成)
2018
2019 米ベインキャピタル 廣済堂(賛成)
南青山不動産 廣済堂(中立)
エイチ・アイ・エス ユニゾホールディングス(反対)
米フォートレス ユニゾホールディングス(反対)
2020 シティインデックスイレブンス 東芝機械(反対)
DCMホールディングス 島忠(留保)
ストラテジックキャピタル 京阪神ビルディング(反対)
米カーライル・グループ 日本アジアグループ(賛成)
出光興産 東亜石油(賛成)

文:M&A Online編集部

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