2020年の上場企業におけるMBO(経営陣による買収)が10件に達し、9年ぶりに2ケタに乗せた。いずれも株式の未公開化を目的とし、上場企業の看板を返上する決断だ。

"究極"の買収防衛策

究極の買収防衛策ともいわれるMBOだが、再び増えているのには何か理由があるのだろうか?

上場企業に対するMBOはTOB(株式公開買い付け)を活用して行われるのが一般的。株式の多くを保有する創業家出身の経営陣が主導する場合が大半を占める。

2020年のTOBは42件(11月9日時点、届出ベース)。このうちMBOについては5日に、東証1部上場で測量や再生可能エネルギー事業を手がける日本アジアグループが株式の非公開化を発表したことで年間10件(一覧表)となった。

10件中、JEUGIA、川金ホールディングスを除く8件はMBOにあたって創業者(家)の意向が反映されており、所有と経営を一つにする狙いが込められている。

◎2020年MBO一覧 ※川金HD、日本アジアグループはMBO(TOB)実施中

公表社名事業内容
1月 豆蔵ホールディングス システム開発支援
JEUGIA 楽器販売
2月 オーデリック 住宅用照明器具
ミヤコ 住宅用給排水器具
総合メディカルホールディングス 調剤薬局・医業支援
5月 ニチイ学館 医療事務受託、介護
6月 小島鉄工所 油圧プレス機製造
9月 キリン堂ホールディングス ドラッグストア
川金ホールディングス 橋梁用部品製造
11月 日本アジアグループ 測量、再生可能エネルギー事業

投資ファンドと組むケースが優勢に

MBOは2000年代後半から2010年代初めにかけて膨らみ、ピーク時の2011年は年間21件に上り、全TOBの3分の1以上をMBOが占めた。2000年代半ば、村上世彰氏、ホリエモン(堀江貴文氏)ら物言う株主の台頭、ブルドックソース事件に代表される海外投資ファンドの株買い占め問題などが非公開化を促す要因になったみられる。

MBOは2012年、2013年が各9件で、以降は5件前後で推移してきた。それが今年はすでに10件とにわかに息を吹き返した形だが、ある変化が読み取れる。

ほぼ同数だった2013年(9件)と比べると、明らかな違いが投資ファンドの存在だ。2013年当時、投資ファンドが介在したMBOは1件にとどまるのに対し、今年は10件中5件と半数を占める。

ニチイ学館、キリン堂ホールディングスは米ベインキャピタル、日本アジアグループは米カーライル・グループと組んだ。ニチイ学館のMBOは創業家の相続対策の一環とみられている。

一方、豆蔵ホールディングスはインテグラル、総合メディカルホールディングスも同じく国内投資ファンドのポラリス・キャピタル・グループをパートナーとした。

経営陣が株式を買い付けるためのMBO資金は銀行借り入れなどで賄うが、最近は投資ファンドと連携するパターンが優勢だ。世界的な低金利で投資マネーが高リターンを求めてM&A市場に向かっていることが背景にある。

ポストコロナを見据え、勢い増す?

もう一つ見逃せないのは買収リスクだ。コーポレートガバナンス改革に伴う持ち合い解消を通じた安定株主の減少や、物言う株主による株主提案の活発化などで、割安企業を中心に買収のターゲットとされやすい。このため、非公開化は究極の買収防衛策となり得るからだ。

新型コロナウイルス感染症の収束が見通せない状況下、経営環境は不透明感を増している。こうした中、ポストコロナを見据え、目先の株価や業績にとらわれず、中長期的な視点で大胆な経営改革を進めようと、上場企業の"名"を捨ててでも"実"をとる動きが勢いを増す可能性もある。

文:M&A Online編集部