敵対的TOBに「異変」あり? 13年ぶりの高水準

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京阪神ビルディングが展開する都内のオフィスビル(東京・虎ノ門)

敵対的TOB(株式公開買い付け)が今年、13年ぶりの高水準で推移中だ。1月からの累計は5件となり「ブルドックソース事件」が起きた2007年と並ぶ。「新型コロナ」下、TOB戦線に異変が起きているのか。

2020年は全TOBの1割「敵対的」

京阪神ビルディングは11月19日、投資ファンドのストラテジックキャピタル(東京都渋谷区)が同社に対して実施中のTOBに反対意見を表明した。「短期的な利益のみを追求し、中長期的な企業価値向上に資するかどうかは疑問だ」として、株主にTOBに応じないよう要請した。

ストラテジックは約9%の持ち株比率を約30%に引き上げて発言力を増すことを目的として11月5日から1株1900円で買い付けを始めたが、京阪神ビルはこれまで意見を留保していた。反対表明により、今年5件目の敵対的TOBが確定した(一覧表)。

2020年のTOBは49件(11月25日時点、届出ベース)で、このうち対象企業の賛同を得ずに行われる敵対的TOBの件数が全体の1割を占める形だ。これは2007年以来13年ぶりの高水準だが、当時はTOB自体が年間102件に上っていたため、実質的に2倍のハイペースといえる。

◎2020年:敵対的TOB一覧

公表月 公開買付者 対象企業 成否
1月 前田建設工業 前田道路 成立
シティインデックスイレブンス 東芝機械(現芝浦機械) 不成立
2月 META Capital 澤田ホールディングス 進行中
7月 コロワイド 大戸屋ホールディングス 成立
11月 ストラテジックキャピタル 京阪神ビルディング 進行中

旧村上ファンド系、5件中2件に関与

京阪神ビルは関西を中心に事務所ビル、場外馬券場「ウインズ」(5カ所)、データセンター、商業施設などの不動産賃貸事業を展開する。TOBに先立ち、ストラテジックは今年6月の京阪神ビルの株主総会に取締役1人の選任や賃貸用不動産の売却などを求める株主提案を行ったが、否決された経緯がある。

ストラテジックは旧村上ファンドの出身者が代表を務める。旧村上ファンド系の投資会社による敵対的TOBへの関与は今年もう1件あり、東芝機械(現芝浦機械)がターゲットになったが、TOBは不成立に終わった。

TOBが発表されると、対象企業は10営業日以内に賛成、反対、中立、留保などの意見表明を行わなければならない。ほとんどの場合、対象企業が賛同する形で友好的に行われる。

日本では敵対的TOBは2007年の5件をピークに、以降は年に1件あるかどうかだった。それが2019年(3件)を境に再び動意づいているのだ。

◎敵対的TOB:件数の推移

TOB総件数 うち敵対的TOB
2020 49 5
2019 46 3
2018 42 1
2017 46 1
2016 50 0
2015 50 2
2014 36 1
2013 57 1
2012 52 1
2011 55 1
2010 59 0
2009 79 0
2008 78 1
2007 102 5
2006 65 4

M&A Online編集部調べ

第2次アクティビストブームが到来

象徴的な出来事が昨年初め、スポーツ用品大手のデサントに仕掛けた伊藤忠商事の案件。大手企業同士が争うケースは2006年の王子製紙(現王子ホールディングス)による北越製紙(現北越コーポレーション)への敵対的TOB以来とあって、世間の注目を集めたのは記憶に新しい。

2000年代といえば、村上世彰氏率いる村上ファンドの登場や外国投資ファンドの日本上陸が上場企業の脅威となり、第1次アクティビスト(モノ言う株主)ブームが喧伝された時期。日本のM&A史に残る「事件」が相次いだ。

その一つ、村上ファンドが不動産会社の昭栄(現ヒューリック)を対して日本初の敵対的TOBを実施したのは2000年。さらに2007年にはブルドックソースが米スティール・パートナーズのTOBに対して日本初となる買収防衛策を発動した。いわゆるブルドックソース事件だ。

翻って、世界的なカネ余りやコーポレートガバナンス改革の流れを受け、第2次アクティビストブームが到来したといわれる日本。産業界ではコロナ後の「新常態」を見据え、M&A意欲がおう盛で、その延長線上で敵対的TOBの発展するケースも増えそうだ。

文:M&A Online編集部

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