2020年に入り、経営陣による買収(MBO)がすでに5件に達し、前年の6件に早くも並ぶ勢いだ。このままのペースでいけば、2013年以来、7年ぶりに2ケタ(10件)に乗せる公算が大きい。

敵対的買収を回避する究極の策

MBOを通じて上場廃止は敵対的買収を回避する究極の策とされる。その数は2011年の21件をピークに減少傾向に転じているが、モノ言う株主(アクティビスト)による株主提案の活発化などを背景に潮目の変わる可能性もあり、今後の推移が注目される。

5件のMBOは1月30日から翌週の2月5日までの1週間の間にバタバタと発表された。非公開化によって上場企業の看板を下ろすことを決めたのは豆蔵ホールディングス(東証1部)、JEUGIA(東証2部)、オーデリック(東証1部)、ミヤコ(ジャスダック)、総合メディカルホールディングス(東証1部)。

上場歴が最も長いのは1991年以来のJEUGIAで30年近い。最も浅い豆蔵HDでも2004年から16年となる。5件のうち、JEUGIA を除く4件のMBOは創業者(家)の意向によるもので、所有と経営を一つにする狙いが込められている。

◎2020年:MBOによる非公開化を発表した企業

業種上場年PBR
豆蔵HDシステム開発支援20043.55
JEUGIA楽器販売など19910.64
オーデリック住宅用照明器具19961.08
ミヤコ住宅用給排水器具20000.95
総合メディカルHD調剤薬局・医業支援20011.92

※PBR(株価純資産倍率)は2月14日時点

迅速な経営判断へ…企業統治への懸念も

それにしても、なぜ、多くの企業にとって目標である上場企業の座を返上してまで非公開化するのか。

各社がそろって大きな理由の一つに挙げるのが「抜本的・機動的な意思決定を可能にする経営体制の構築」。機関投資家など株主の要求や株価動向など市場の声に惑わされることなく、中長期的な戦略や方針に基づき、迅速な経営判断が行えるようになるというわけだ。

含み資産を持ちながら、時価総額を純資産で割ったPBR(株価純資産倍率)が1倍を割り込むような割安企業は買収のターゲットとされやすい。したがって、上場廃止による非公開化は買収リスクから経営陣を解放することを意味する。一方で、非公開化はコーポレートガバナンス(企業統治)や経営監視機能の低下につながるといった懸念が生じる。

MBOに際しては、経営陣が市場から株式を買い付けるための資金を銀行借り入れなどで賄うが、投資ファンドの協力を得る場合も少なくない。

今回の5件のケースをみると、JEUGIAが19億4700万円、オーデリックは313億円、ミヤコは31億円の銀行融資を受ける。豆蔵HDは国内投資ファンドのインテグラル(東京)、総合メディカルHDも同じく国内投資ファンドのポラリス・キャピタル・グループ(東京)と組む。MBO資金として、豆蔵HDは344億円、総合メディカルHDは763億円を必要とする。

2011年を境に減少、反転に向かうか?

MBOは2000年代後半から2010年代初めにかけて盛り上がった。リーマンショックによる金融危機が起きた2008年16件→09年18件→10年13件→11年21件→12年9件→13年10件と推移し、以降は6件~3件。ピーク時の2011年は全TOB株式公開買い付け)の3分の1以上をMBOが占めた。

2000年代半ば、旧村上ファンドに代表されるモノ言う株主や一部の外国人投資家による株買い占めが先鋭化したことなどから、非公開化に向けた企業の背中を押した。

また、近年は政府主導のコーポレートガバナンス改革で持ち合い解消による安定株主の減少が進み、割安企業を中心に買収リスクが高まっているほか、株価維持のために自社株買いなどの株主還元が強く求められている。

こうした中でのMBOラッシュ。2020年を境に、非公開化志向が再び台頭する転換点になるのだろうか。

TOB株式公開買い付け)の推移

 年 TOB 敵対的案件 MBO
2020 10 2 5
2019 46 3 6
2018 42 1 3
2017 46 1 5
2016 50 0 5
2015 50 2 6
2014 36 1 4
2013 57 1 10
2012 52 1 9
2011 55 1 21
2010 59 0 13
2009 79 0 18
2008 78 1 16

文:M&A Online編集部