富士フイルムホールディングス(HD)<4901>はヘルスケア分野でほぼ1年ぶりとなる大型M&Aを繰り出した。29日、石油元売り首位のJXTG<5020>傘下で細胞培養に必要な培地を手がける米国企業など2社を約850億円で買収することを発表した。昨年4月に武田薬品工業<4502>傘下の和光純薬工業(2018年4月1日付で富士フイルム和光純薬に社名変更)を約1500億円で子会社化し、すでに培地事業に参入。今回の米社買収は、バイオ医薬品の開発・製造受託(CDMO)事業や再生医療分野の研究開発を国内外で加速させる狙いがある。

細胞培養用「培地」のリーディングカンパニーを手中に

買収するのは、アーバイン・サイエンティフィック・セールス・カンパニー(カリフォルニア州サンタアナ)と、日本やアジアに同社の培地製品を販売するアイエスジャパン(埼玉県戸田市)で、6月までに両社の全株式を取得する。アーバイン社は1970年設立で、バイオ医薬品向けや体外受精・細胞治療向けの培地を幅広く取り扱う、この分野のリーディングカンパニー。

培地は細胞の生育・増殖のための栄養分を含んだ液状や粉末の物資で、バイオ医薬品などの研究開発・製造の際に欠かせず、培地の品質によって細胞培養のグレードや効率が左右されるといわれる。培地は2017年の市場規模が約1300億円(全世界)とされ、今後も年率10%の成長が期待される有望分野だ。

JXTG は1987年に、アーバイン社を子会社化し、バイオ医薬品市場の成長に伴う需要増を見込んで培地事業に参入。2年後の1989年には販売を担うアイエスジャパンを設立した。JXTGは「両社は安定的に利益貢献するまでに成長した」としながらも、事業ポートフォリオを見直す中で、コア領域である石油精製・化学品との関連性が低いと判断、譲渡を選択した。培地は成長分野である半面、高水準の継続的な投資が求められることがネックになったとみられる。

富士フイルムHDは1月末、米ゼロックスの買収を発表した。これにより、複写機など事務機で世界トップに立つと同時に、グループ売上高は3兆円突破することになった。事務機のウエートは全体の約6割を占めるまでになるが、事務機は先進国を中心に市場の成熟が顕著だ。

「ヘルスケアで1兆円を目指す」。同社が10年前、こうアドバルーンを打ち上げた。事務機に次ぐ柱と位置付けたのがヘルスケア分野だ。医療機器、医薬品、再生医療、機能性化粧品などからなり、現在、売り上げは4000億円規模となっているが、この10年余り、際立つのは大型M&Aの連打だ。