ファンケル<4921>の創業者でもある池森賢二会長執行役員ファウンダーが、創業家の保有する自社株33.0%(議決権ベース)をキリンホールディングス(HD)<2503>へ譲渡する。「国内サプリメント首位のファンケルと、ビール・飲料大手のキリンの資本提携」と大きな話題になったが、実態は池森会長による自社の「事業承継」だ。

創業家一族の「持ち株による影響力」を残さず

事業承継といえば「後継者不在に悩む中小企業がやるもの」というイメージがあるが、ファンケルのような上場企業でもオーナー経営者が存在する場合は「選択肢」としてありうることを証明したといえそうだ。

もちろん、ファンケルには池森会長の後継者が存在する。正確にはキリンはファンケルの「後ろ盾」となるが、池森会長が「私がしっかり判断ができるうちに、将来を託せる企業に譲った方が良いという結論になった」と語っていることからも、事実上の事業承継といえるだろう。

これまでオーナー経営者が大企業の資本提携で登場するケースは、出光興産<5019>と昭和シェル石油<5002>の経営統合で見られたような「経営の独自性が失われる」と反対に回る、あるいは伊藤忠商事<8001>による敵対的TOBを受けたデサント<8114>のようにオーナー一族が追い出されるといった「敵対型」がほとんど。ファンケルのように創業家が主体的に他社への事業承継を進め、友好的に資本提携するのは極めて珍しい。

もちろん池森会長はファンケルをキリンに「売り渡した」わけではない。キリンの出資比率は株主総会特別決議における単独拒否権を行使できる3分の1に達せず、池森会長が「キリンならば社員を大切にし、ファンケルの独立性を維持しながら、愚直に研究開発をするまじめな企業風土やブランドを守ってくれる」と話していることからも、ファンケルの独自性を守ることを最優先で考えたのは間違いない。

「愚直に研究開発をするまじめな企業風土やブランドを守ってくれる」のが株式譲渡の決め手に(同社ホームページより)

注目すべきは創業家が30%もの株を譲渡し、持ち株による経営への影響力を手放すことだ。オーナー経営の世代交代で最も大きな障害は、前経営者が退いた後も影響力を持ち、新経営者が求心力を持てないこと。特に改革志向の強い新経営者には社内の反発も強く、前経営者であるオーナーに不平不満を吹き込んで引きずり下ろそうとする動きが出がちだ。