インターネット通販大手の米アマゾンが、プリペイド携帯電話キャリア(通信事業者)「ブースト・モバイル(Boost Mobile)」の買収に動き出したとの観測が流れている。ブースト・モバイルは米スプリント傘下で、いわばソフトバンク<9984>の孫会社に当たる。スプリントはドイツテレコム系の米TモバイルUSと経営統合を進めているが、その障害となっているのがブースト・モバイルだ。なぜか。

買収の目的は「コンテンツの配信ルート」づくり

米国では低所得者層がプリペイド携帯の主要ユーザーとなっている。米司法省はスプリントとTモバイルUSが低料金のプリペイド携帯に強いことから、両社が合併した場合は同サービスでの競争が緩和され低所得者層に不利益になるのではないかと懸念しているのだ。

そのためスプリントはブースト・モバイルの売却を検討しており、アマゾンが興味を示しているのだ。売却なしにはTモバイルUSとの合併が進まないため、ブースト・モバイルは「投げ売り」される可能性が高い。売却価格は60億ドル(約6500億円)前後とみられているが、スプリントの親会社であるソフトバンクが2006年に英ボーダフォンから、米カリフォルニア州より狭い日本での携帯電話事業を約1兆7500億円で買収したのに比べれば格安だ。

ただ、アマゾンも「安いから買う」という酔狂なことはしない。では、携帯事業参入で何を狙うのか?最も可能性が高いのは、自社のコンテンツを配信する手段である。実はアマゾンが自社ブランドで販売している電子書籍端末「Kindle(キンドル)」には「無料4G」モデルが存在する。外出先などWi-Fi(無線LAN)のない環境でも電子書籍コンテンツをダウンロードできる。ただし他社の携帯回線を利用しているため、データ容量の小さいテキスト情報が中心だ。

データ通信量が少ない電子書籍の「Kindle」には無料携帯通信モデルが用意されている(Photo by Pixabay)

アマゾンの自社ブランド端末には電子書籍に加えて動画や音楽なども楽しめる「Fire(ファイヤー)」シリーズもあるが、ダウンロードはWi-Fi経由だ。この「Fire」シリーズ向けに「Kindle」同様の「無料4G」モデルを追加するためには、携帯電話事業を買収するのが最も手っ取り早い。自社の子会社にしてしまえば、大容量データ通信のコスト負担は問題ではなくなる。