既存産業の生産性を高め、得られた利益でイノベーション(技術革新)を起こし、花形産業に変革させる。こんな構想を打ち上げた企業がある。

元々は看板業から始まったクレスト(東京都港区)がそれで、クレスト自体の変革経験をもとに2006年に営業譲受した植物販売会社を母体とするインナチュラルの店舗でも花形産業への変革を実施中。今後は新たな産業に進出し、同様の変革に取り組むという。

仕掛け人であるクレストの永井俊輔社長は「アップルは音楽の配信でCD産業を破壊した。ウーバーもタクシー産業を破壊した。既存産業は何もしないと外部から破壊される。その前に自ら変革し、ビジネスモデルそのものを見直し、AI(人工知能)やロボティクス、ドローンなどと同じような花形産業に昇華させたい」と動機を披露する。

どのように既存産業を花形産業に変革させるのか。看板業クレストとガーデニング店舗のインナチュラルの事例を見てみると。

看板業からIT企業に

クレストは永井社長の父親が群馬県で創業した屋外看板の施工会社で、2009年に永井氏は勤めていた投資ファンドからクレストに入社し、10年かけて看板だけでなくウィンドーディスプレーやサイネージ(電子看板)などを手がけ、売り上げを伸ばしていった。

2016年には社長に就任し、同年からウィンドーディスプレーにカメラを取り付けるデジタル化に取り組み、何人がウィンドーディスプレーの前を通り、何人が見て、そして年齢や性別を推定して、何人が入店したかというリアル店舗の行動を分析するリテールテック事業を始めた。

破壊(ディスラプション)される前に自分たちでイノベーションを産むことが大切」と力説する永井社長

永井社長は「看板はいずれ液晶ディスプレーなどに置き換わることが想像できる。今の看板企業ではなく、全く違う業種が参入してきて、一気にこの産業を壊してゆく可能性もありうる。そして世の中の看板の効果測定、分析もいずれ誰かが行うだろう。そうなる前に自分たちで手がけることにした」という。

このシステムで、どのようなディスプレーに効果があるのか、どのような陳列をすると売り上げが伸びるのかなどについて検証することができるようになった。

この事業はクレストを看板の製作にとどまらず、データの集積や分析などを行う先端的なIT企業へと変身させた。データの分析にはAIなどの技術が必要となるため、ベンチャー企業と協力関係を作りシステム開発を進めた。永井社長自らもAIプログラミングの知識を習得するほどの熱の入れようだ。