経営再建中の大手書店チェーン、文教堂グループホールディングス(HD)は6月28日、私的整理の一種である事業再生ADR(裁判外紛争解決手続き)を第三者機関の事業再生実務家協会(東京都港区)に申請し、受理されたと発表した。

同日付で、取引金融機関に借入金元本の返済一時停止などを求める通知書を送った。裁判所を介さない方法のため、民事再生法などの法的整理に比べ、早期の再建が可能とされる。

8月末の上場廃止をひとまず回避へ

同社は2019年8月期末までに債務超過を解消しない限り、上場廃止となるが、事業再生計画案が金融機関の同意を得て成立すれば、1年間、猶予期間の延長が認められ、上場を維持したまま、再建に取り組める。2カ月後に差し迫っていた上場廃止を辛うじて回避し、債務超過解消までの時間をもう1年間稼ぐ窮余の策だ。

ただ、出版市場の縮小が続く中、本業の書店経営で展望を開くのは極めてハードルが高い。再建に向けては創業的な出直しが問われることになりそうだ。

文教堂HDは2018年8月期に2億3000万円の債務超過に陥った。これを受け、東京証券取引所は11月末に上場廃止の猶予期間入りの銘柄に指定した。上場企業は1年以内に債務超過を解消しないと上場廃止に追い込まれるルールとなっている。文教堂HDの場合、そのリミットは19年8月期末。

同社は18年8月期に20店舗の不採算店を閉鎖するなど構造改革を実施した(同期末の店舗数は144店舗)。19年8月期も引き続き不採算店舗からの撤退、グループ内の保有不動産の売却・賃貸を進めるほか、増資も検討し、早期に債務超過を解消するとしていた。

閉店を知らせる張り紙(2018年1月、都内)

しかし、これまでの取り組みだけでは8月期末の債務超過の解消は困難だとして、事業再生ADRの活用を決めた。事業再生ADRは中立的立場の事業再生実務家協会の助言や調整により、過大な債務を負った事業者が法的整理手続きによらず、金融機関など債権者の協力を得ながら早期再建を目指す制度。

大株主の大日本印刷、増資引き受けは?

7月12日に第1回の債権者会議を開き、再生計画案を説明する。8月9日に第2回、9月27日に第3回を予定し、再生計画案の決議を目指す。文教堂HDに約23%を出資する大株主の大日本印刷が増資を引き受けるのかどうか、その動向が焦点とみられている。

8月28日に招集する臨時株主総会では減資を諮る。約19億3500万円減資し、資本金を1億円とする内容。減資によって累積赤字を補填する。

文教堂HDの18年8月期は売上高8.5%減の273億円、営業赤字5億4500万円、最終赤字5億9100万円。有利子負債は141億円にのぼる。19年8月期の業績予想は公表していないが、10%程度の売上減少と赤字継続となる見通しだ。

文教堂HDは1949年に川崎市で、「島崎文教堂」としてスタートした。東京、神奈川県など首都圏を中心に店舗を増やした。1993年に、文教堂に社名を変更し、1994年に店頭登録(現ジャスダック)。2008年に現在の持ち株会社制に移行した。

出版市場の縮小、書店経営を直撃

活字離れやデジタルコンテンツの普及に伴う出版市場の縮小はサプライチェーンの末端に位置する書店を直撃し、これにアマゾンなどのネット書店の台頭が追い討ちをかけている。商店街など街の本屋が次々に姿を消したことに象徴される。現在、書店数は全国1万2000店ほどで、この10年で約5000店減った。

そうした中、大手書店の一角をなす文教堂HDも急速に体力が低下し、2010年代に入り、売上高を100億円も落とすことになった。再生手続きを奇貨とし、書店経営の新たなビジネスモデルをどう提示するのか、要ウオッチだ。

文:M&A online編集部