【当世・外国人社長事情】三菱ケミカルで初めて誕生、市光工業は3代連続

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初の外国人社長が誕生した三菱ケミカルホールディングスの本社前(東京・丸の内)

化学国内首位の三菱ケミカルホールディングス(HD)で外部招聘によるジョンマーク・ギルソン氏が4月1日付で社長に就任した。外国人社長は同社初。自動車部品メーカーの市光工業では3月末、3代連続で外国人が社長に就いた。外国人社長には日本的慣行や社内のしがらみにとらわれない大胆な経営改革の実行、グローバル感覚などへの期待が大きいが、日本の上場企業でその数はほんの一握り。

社長業に毀誉褒貶はつきものとはいえ、日産自動車の再建に辣腕をふるい、カリスマ経営者として名をはせたカルロス・ゴーン元会長が会社法違反(特別背任)などで起訴され、保釈中にレバノンに逃亡したことは生々しい記憶として残る。当世・外国人社長事情を垣間見るとー。

三菱グループでは「自動車」に次いで2社目

三菱ケミカルHDの社長に就いたギルソン氏はベルギー出身で、前職はフランスの素材大手ロケットのCEO(最高経営責任者)。欧米化学メーカーでの豊富な経営経験が買われた。日本でも5年間駐在した。

指名委員会による選考の結果、ポートフォリオ・トランスフォーメーション(事業構成の変革)を加速し、社会課題の解決をグローバルに主導することにより、持続的な成長を実現するうえで適任であると判断したという。

実力会長である小林喜光氏(経済同友会前代表幹事)とどう息の合ったコンビを組むことができるのかも注目点だ。

三菱グループの主要企業では20年ほど前、三菱自動車で外国人社長が誕生したことがある。もっとも、この時は資本提携先のダイムラー・ベンツ(現ダイムラー)が苦境にあった三菱自動車に社長を送り込む救済色の強いものだった。

自動車用ランプ大手の市光工業では3月25日にサワー・ハイコー社長の後任としてヴィラット・クリストフ専務が昇格した。同社の外国人社長は2010年に就任したオードバディ・アリ氏(現会長)から3代連続で、いずれもフランス自動車部品メーカーのヴァレオ・バイエン出身。

市光工業とヴァレオはもともと協業関係にあったが、2017年にヴァレオがTOB(株式公開買い付け)を通じて市光工業を子会社化(東証1部上場は維持)した。親子関係にある以上、本国からトップが送り込まれるのは不思議ではない。

市光工業 本社・伊勢原製造所(神奈川県伊勢原市)

現役組では武田薬品・ウェバー氏が在任7年に

現役の外国人トップとして在任7年に及ぶのは武田薬品工業を率いるクリストフ・ウェバー社長CEO。2019年1月に日本企業によるM&Aとして過去最大の約6.2兆円を投じてアイルランド製薬大手のシャイアーを買収し、世界トップ10入りを果たした。医療用医薬品事業に経営資源を集中する一方、一般大衆薬事業(現アリナミン製薬)を米投資ファンドに売却するなど、事業の入れ替えを積極的に進めている。

同じ現役組ではJSRのエリック・ジョンソンCEO。2019年6月に同社初の外国人トップとして常務から昇格した。

玩具大手、タカラトミーの立て直しに活躍したのがハロルド・メイ氏。2014年にスカウトされ、副社長・海外事業統括本部長を経て、2015年6月に社長に就任した。同氏はユニリーバや日本コカ・コーラで鳴らした“プロ経営者”。再建にめどをつけると、社長在任2年半で退任。その後、新日本プロレスの社長に転身し話題を集めた(昨年10月退任)。

ソニーグループ、「外国人トップ」待望論を封印

ソニー(現ソニーグループ)で初の外国人トップとなったのはハワード・ストリンガー氏。2005年に会長兼CEOに就き、後に社長も兼務。米テレビ界の出身で、ソニー米国法人の社長などを経て本社のトップに引き上げられた。2012年の退任まで在任期間は7年及んだが、むしろ停滞感が目立った。ヒット商品が不発で、エレクトロニクス企業としてモノづくり力の低下への懸念が広がった。日本を代表するグローバル企業の同社だが、外国人トップ待望論は封印されたままだ。

日産元会長のゴーン被告は1999年に、フランスのルノーから送り込まれ、窮地の日産を再生し、豪腕経営者とうたわれてきた人物。あろうことか、金融商品取引法違反容疑で逮捕されたのは2018年11月。いわゆる“ゴーンショック”だ。長期政権の膿みが事件となって噴き出し、日産の経営は今も迷走から抜け切れず、自動車各社で一人負けの状況だ。

ゴーンショックの後遺症が残る…日産自動車本社(横浜市)

迷走を重ねたという点では、ガラス大手の日本板硝子も苦い経験を持つ。同社が自身の約2倍の売上規模を持つ世界第3位のガラス大手、ピルキントンを買収したのは2006年。この大型M&A後の経営を外国人社長に託したが、2代続けて2年ももたずに退任したのだ。経営へのダメージも大きく、2007年3月期から16年3月期までの10年間で6度の最終赤字に陥る惨状に苦しんだ。

古くは、マツダが1996年から2003年にかけ、大株主の米フォードから4代続けて社長を受け入れたことがある。両社が1979年以来続いてきた資本関係を解消したのは2015年のことだ。

こうしてみると、ひと口に外国人社長といっても、今回、三菱ケミカルHDのトップに就いたギルソン氏のように「助っ人社長」としてスカウトされるケースのほか、親会社を含めて資本関係先の出身者が就任するケース、内部昇格するケースが少なくないことが分かる。

企業活動のグローバル化とともに、経営人材のダイバーシティ(多様性)が進展する中、外国人社長の登場機会が増える方向にあることは間違いなさそうだ。

◎上場企業:主な外国人トップ(社長・CEO、一部は会長職を含む)

企業名 名前(敬称略) 在任期間
三菱ケミカルHD ジョンマーク・ギルソン 2021年4月1日就任
市光工業 ヴィラット・クリストフ 2021年3月25日就任
サワー・ハイコー 2017年6月~21年3月
オードバディ・アリ 2010年10月~17年6月
JSR エリック・ジョンソン 2019年6月~
武田薬品工業 クリストフ・ウェバー 2014年6月~
タカラトミー ハロルド・メイ 2015年6月~17年12月
ソニーグループ ハワード・ストリンガー 2005年6月~12年3月
日本板硝子 クレイグ・ネイラー 2010年6月~12年4月
スチュアート・チェンバース 2008年6月~09年9月
三菱自動車 ロルフ・エクロート 2002年6月~04年4月
日産自動車 カルロス・ゴーン 2000年6月~18年11月
マツダ ルイス・ブース 2002年6月~03年8月
マーク・フィールズ 1999年12月~02年6月
ジェームズ・ミラー 1997年11月~99年12月
ヘンリー・ウォレス 1996年6月~97年11月

文:M&A Online編集部

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