物流各社も「ハラール認証」必須の時代に!|人とものを「運ぶM&A」

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食品流通だけでなく、物流全般にハラール認証が求められる(metamorworks/iStock)

4月にはさまざまな行事がある。コロナ禍でいろいろな変更を余儀なくされているとはいえ、春の訪れとともに私たちも前に進んでいかなければならない。世界的な行事として、2021年は4月13日からイスラム教のラマダン(Ramadan)がはじまる。ムスリム(イスラム教徒)にとって重要な1カ月だ。

イスラム教と聞けば多くの人が連想するのは、このラマダン、そしてハラール(Halal)ではないだろうか。ハラールとは「イスラム法で許されていること、合法的なこと」を指す。

ハラール認証品質に対応した国内航空貨物輸送サービス

日本通運(日通)<9062>は、2021年3月8日からハラール認証品質に対応した国内航空貨物輸送サービスを開始した。2020年3月に日本国内でのハラール認証を取得以降、着々とサービスを拡充している。このハラール輸送サービスでは専用ラベルの貼付、従業員のハラール教育、一元化など使いやすさを追求している。

ムスリムは約16億人(2010年時点)と全世界人口の約2割を占め、キリスト教徒の約22億人に迫っている。キリスト教徒に比較してムスリムの増加率は大きく、2070年にキリスト教徒とほぼ同数、2100年には追い越して最大勢力となるとされる(米調査機関ピュー・リサーチ・センターの予測)。

その重要行事ラマダンは、「断食」として知られている。5月12日までの1カ月、日の出から日没まで飲食はしない。そのほか日中は喫煙や人の悪口なども禁じられるなど細かな決まりがある。日の出前、日没後は飲食できる。

日本国内のムスリムは少数派のように思われがちだが、留学生を含め増加傾向にある。およそ16万人から20万人規模と言われてきた。今後はさらに増えていくだろう。多くの日本企業はムスリムへの配慮を進めており、インバウンド対応でも注目されたハラール認証は、飲食店や企業で取得が進んでいる。

2014年、マレーシアで日本企業初のハラール認証を受けた日通

「物流会社がハラール?」と不思議に思う人も多いだろう。これまでハラールといえば食品メーカー、飲食店の印象が強かった。だが、流通段階、輸送や倉庫にも及ぶものなのだ。すでにメーカーの多くがハラールに取り組んでいるのだから、輸送関係の業務でもハラールが求められるのも当然だろう。

ムスリムの“戒律”が物流業界のスタンダードに!?(CreativaImages/iStock)

ハラールの逆はハラーム(違法)。豚やアルコールはハラームだ。食品だけではなく日常生活においてもさまざまな規定がある。ハラール物流は、商品や製品の輸送保管段階でもハラールであることが追跡できること。そして、食品も物流も同様に、ただハラールであるだけではなく、高品質が求められている。

日通は2014年にマレーシアで日本企業として初めてハラール認証を得ている。2018年にはインドネシア現地法人も対応。人口の9割がムスリムのインドネシアでハラール一貫物流を提供している。そして日本国内でもサービスを拡大してきた。2016年には東京海運支店にはじまり、以後、福岡海運支店や大阪国際輸送支店・中央国際事業所でハラール認証を得て、ハラール製品の輸出入業務、保税倉庫での保管業務、国内物流に対応。そして2021年、国内航空貨物輸送サービスへと拡大してきたわけだ。

物流業界でのハラール認証取得は海外現地法人だけではなく、日本国内でも注目されている。国際物流を担う山九は2016年に取得、ニチレイロジグループのキョクレイは2019年に倉庫のハラール認証を得ている。兵機海運<9362>や草津倉庫もハラール保管に対応。鈴江コーポレーションは2015年にお台場流通センターでハラール認証を取得している。

創立100周年の2037年度に売上高4兆円を目指す

ハラールに取り組んだものの方針を変更している例もある。ニッコンホールディングス<9072>は2017年にハラール物流の子会社としてN&Aハラルロジスティクスをマレーシア企業と合弁で設立したが、2020年3月に八基通商へ売却している。理由は業務量が計画ほどは増えなかったからだ。

ハラールを取得すればユーザーが増える、あるいは売上が伸びる、といった単純な図式は描けない。

とはいえ、ハラール物流へのニーズが存在している以上、今後は日本国内でも当たり前に求められるようになる。

日通は国際物流、総合物流で年商2兆円規模と世界でも有数の大手。国内では引っ越し大手でもあり、陸海空の輸送に精通していることもあってコロナ禍でも堅調な業績で推移している。2010年に宅配便事業(ペリカン便)を日本郵政に譲渡したことは大きなニュースとなった。

2019年には、5カ年中期経営計画として日通グループ経営計画2023「非連続な成長 “Dynamic Growth”」を策定した。創立100周年の2037年度に現在の売上高のおよそ2倍、4兆円規模を目指す。「グローバル市場で存在感を持つロジスティクスカンパニー」を旗印とし、海外売上高比率50%を目指す。2020年3月期の海外売上比率で約20%で、このうちムスリム人口の多い東南アジアなどの占める比率は9.7%。経済成長の見込める国・地域であり、ここに今後の活路がある。

M&Aにも積極的に取り組んでいる。2020年に医薬品物流の米MD Logistics(インディアナ州)、MD Express(同)の両社を買収した。イタリアでは2013年にアパレル物流会社のフランコ・ヴァーゴ、2018年にも同じくアパレル物流のトラコンフを買収した。

◎関連年表

2014 年 日本通運 マレーシアで日本企業として初のハラール認証取得
2015年 鈴江コーポレーション 台場流通センターでハラール認証取得
2016年 日本通運 東京海運支店でハラール認証取得
山九 ハラール認証取得
2017年 日本通運 福岡海運支店でハラール認証取得
2018年 日本通運 インドネシア現法でハラール認証取得
2019年 日本通運 グループ経営計画2023「非連続な成長“Dynamic Growth”」策定
キョクレイ(ニチレイロジグループ) 倉庫のハラール認証取得
2020年 日本通運 日本国内でのハラール認証取得
2021年 日本通運 3月8日からハラール認証品質に対応した国内航空貨物輸送サービス開始

文:舛本哲郎(ライター・行政書士)

舛本 哲郎 (ますもと・てつろう)

1957年横浜生まれ。日本大学経済学部卒。物流・流通専門誌、ビジネス誌「ウェッジ」、金融専門誌などの編集・記者、経営専門誌の編集長を経て、2017年より、総合情報サイト「かきっと!」編集長、直販サイト・イリヤEブックス主宰。

愛玩動物飼養管理士(ペットケア・アドバイザー)。
行政書士試験合格(平成21年度)。舛本行政書士事務所

http://kanto.me/kakit/


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日本通運がM&Aで新分野に挑戦している。国内最大手の日通も成長市場の宅配便で惨敗し、自社が得意とする法人輸送も国内外の物流会社から「侵略」を受けている。日進月歩の物流業界で生き残り、競合他社を出し抜くにはスピードが必要。そのためのM&Aなのだ。