「新型コロナ」4社4様の日本製ワクチン ようやく臨床試験に

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写真はイメージです

第一三共<4568>と明治ホールディングス<2269>傘下のKMバイオロジクス(熊本市)の両社は2021年3月22日に、新型コロナウイルス感染症向けワクチンの国内第1/2相臨床試験を始めた。

国内企業ではアンジェス<4563>が2021年3月10日に第2/3相臨床試験のワクチン接種を完了、塩野義製薬<4507>も2020年12月16日に第1/2相臨床試験に着手しており、今回の2社を加え臨床試験に乗り出した国内企業は4社となった。

日本ではすでに米大手製薬会社ファイザーが開発したワクチンの接種が始まっており、日本企業によるワクチン開発は大幅な遅れをとっている。

それでも国内企業がワクチン生産にかかわることで、安定確保が見込めるほか、4社がそれぞれ異なったタイプのワクチン開発を進めているため、ウイルス変異などに対する備えとしての役割も期待できる。

4社のワクチン開発はどのような状況にあるのだろうか。

遺伝子そのものを投与するmRNAワクチン

第一三共が第1/2相臨床試験を始めたのは新規核酸送達技術を用いたmRNAワクチンで、東京大学医科学研究所と連携して研究開発を進めており、国内の健康な成人と高齢者152人を対象に、安全性などの評価や推奨用量の検討などを行う。

mRNAワクチンは遺伝子そのものを人間の体内に投与することで、ウイルスの一部のたんぱく質を作り出し、免疫力を高めるもので、感染力のないウイルスを体内に取り込むような効果がある。

ただ、一部のたんぱく質だけのため、弱毒化したウイルスそのものを取り込む方法と比べると免疫効果は弱いと言われる。変異ウイルスに対しては、mRNAを構成する塩基の配列を変えることで対応が可能なため、迅速な改良が見込めるという。

ウイルスをバラバラにした不活化ワクチン

KMバイオロジクスが開発しているのは感染力などをなくしたウイルスから作る不活化ワクチンで、健康な成人と高齢者210人を対象に安全性などを検討する。同社では第1/2相臨床試験を短期間で終え、2021年中にも第3相臨床試験実施に向けて準備を進める予定。

不活化ワクチンは大量に培養したウイルスを薬剤などでバラバラにして感染力をなくした成分を用いて作成するもので、インフルエンザワクチンなどはこの方法で生産される。

長年の使用実績があり安全性は高いが、一般的に不活化ワクチンは感染を防止する力が弱いため、十分な免疫力を得るためには何度も接種する必要がある。

環状の遺伝子を投与するDNAワクチン

国内企業の先頭を走るアンジェスが手がけているのはDNAワクチンで、すでに関東と関西の8施設で500人への接種(第2/3相試験)を終えており、今後数カ月の経過観察期間を経て、安全性などを評価する。

DNAワクチンは、ウイルスのたんぱく質を作り出す遺伝子(DNA)を、プラスミドと呼ばれる環状DNAに組み込んだもので、接種すると体内でウイルスのたんぱく質を作り出し、免疫力を得ることができる。

同社では細胞と結合して細胞内に入り込む足掛かりとなるウイルスのたんぱく質(スパイク)の遺伝子をプラスミドに組み込んでおり、接種するとスパイクと結合するたんぱく質(抗体)が体内で作り出される。

体内の抗体はウイルスが侵入してきた際にスパイクと結合するため、ウイルスが細胞の中に入りこむことができず、感染を防ぐことができる。

たんぱく質を投与する遺伝子組み換えたんぱくワクチン

塩野義製薬が開発しているのは、傘下のUMNファーマ(横浜市)が持つ昆虫細胞などを用いたたんぱく質発現技術BEVSを用いた遺伝子組み換えたんぱくワクチンで、当初の予定では2021年2月末から速報データを取得し、経過や感染状況を踏まえたうえで、今後第3相臨床試験の実施に向けて検討を進めていく。

遺伝子組み換えたんぱくワクチンは、ウイルスの遺伝子情報から目的のたんぱく質を作り出し、得られたたんぱく質そのものを投与するもの。遺伝子を投与するmRNAワクチンと比べると、開発に時間がかかるものの、同社が用いているBEVSは、すでにインフルエンザワクチンなどで実用化されており、安全性は高い。

いずれのワクチンも実用化にたどり着くのは2022年になりそうで、2021年中は外国製ワクチンに頼らざるを得ないのが実情だ。

【4社の開発状況とワクチンの種類】

開発状況 ワクチンの種類
アンジェス 第2/3相試験で接種完了(2021年3月) DNAワクチン
塩野義製薬 第1/2相試験を開始(2020年12月) 遺伝子組み換えたんぱくワクチン
第一三共 第1/2相試験を開始(2021年3月) mRNAワクチン
KMバイオロジクス 第1/2相試験を開始(2021年3月) 不活化ワクチン

文:M&A Online編集部

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