「ダスキン」宅配ピザ破談の理由は?

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東京・銀座のミスタードーナツ

ダスキン<4665>は2021年4月7日に、いちごホールディングス(仙台市)と同社子会社のストロベリーコーンズ(同)が展開する宅配ピザ事業の取得を中止すると発表した。ミスタードーナツに次ぐフード事業の柱に育成することを目指し、2020年11月に取得を終える予定だった。

ダスキンは2017年10月にストロベリーコーンズと業務提携し、同社の「ナポリの窯」(ピザ商品)をミスタードーナツ店舗で販売してきたが、この提携についても2021年6月末で終了するという。

フード事業の柱とまで位置付けた宅配ピザ事業の取得が破談になった背景には何があるのだろうか。

交渉で行き違いか

ダスキンは破談の理由を「コロナ禍で事業環境が大きく変化したため」としただけで、詳細については明らかにしていない。

同社が宅配ピザ事業の取得を発表したのは1回目の緊急事態宣言が解除されたあとの2020年6月で、すでにコロナ禍で事業環境は、コロナ以前とは大きく変わっていた。その後も新型コロナウイルスの影響による事業環境には大きな変化はなく、現在も厳しい状況が続いている。

さらにコロナ禍によって、テイクアウトやデリバリーが注目を集めるようになっており、これらサービスを強化する企業が相次いでいる。宅配ピザはこの流れに沿っており、コロナ禍で事業環境が変化したからこそ、今後の展開に明るい見通しが持てる事業の一つであるとも言える。にもかかわらず、ダスキンは事業取得の中止に踏み切った。

一般に一旦合意したM&A案件が破談になるケースでは、買収金額などの金銭面での条件で折り合いがつかなかった場合や、合意後の調査で簿外債務などが発覚した場合などがある。

対象企業や事業に関する財務や法務などに関する事項が正確であることを表明し、保証する表明保証についても破談に向かう遠因となった可能性がある。買い手はリスク低減のために、多くの条項を入れようとする一方、売り手は逆に条項を減らそうとする。この交渉の過程で行き違いが生じたことも考えられる。

業績を上方修正

ダスキンは買収を発表した同じ日に、2021年3月期の業績予想を発表し赤字に転落するとの見通しを公表していた。それが2020年10月に業績を上方修正し、2021年3月期は営業、経常、当期の全段階で黒字を確保できるとの見通しに変わった。

アルコール除菌剤や空気清浄機など衛生関連商品・サービスの売り上げが想定を上回ったほか、フード事業でテイクアウトや新商品の売れ行きが好調だったのが黒字化の要因となった。

さらに2021年2月には再度業績見通しを上方修正し、2021年3月期の売上高を前回予想比1.6%増の1521億円、営業利益を同27.3%増の14億円、経常利益を同5.7%増の37億円、当期利益を同16.7%増の7億円に引き上げた。

宅配ピザ事業をフード事業の柱に育て、業績の回復につなげようとの思惑が、宅配ピザ抜きでも実現できる見通しが立つようになったのも、破談の背景にありそうだ。

ダスキンは積極的なM&Aで業容を拡大してきた。この10年間で適時開示した案件は6件に上る。この方針を変更するとの情報開示は今のところない。宅配ピザに代わる次のM&Aはそう遠い先ではないかもしれない。

文:M&A Online編集部

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