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希望退職者の募集結果、旅行大手KNT-CTを最多に今年19社が発表
希望退職者の募集結果についての発表が連日続いている。今年に入って2カ月余りだが、その数は上場企業だけですでに20社近い。応募者が最多だったのは旅行大手の近畿日本ツーリストなどを傘下に持つKNT-CTホールディングスの1376人で、LIXILの965人、オリンパスの844人などが次ぐ。
2021年1~3月に希望(早期)退職者の募集を発表した上場企業は21社を数え、前年と同じ時期(15社)を4割上回った。ほとんどが新型コロナウイルス感染の影響拡大による業績悪化を理由とする。募集規模100人以上は7社で、3社に1社を占める。JTの1150人を筆頭に、名村造船所の250人が続く。
新型コロナを巡っては「第4波」到来が現実味を帯びる中、企業業績の改善がさらに遅れれば、より広範な業種に人員合理化の動きが拡大する恐れがある。
アパレル大手のワールドはわずか半年余りの間に2度目の希望退職者の募集に追い込まれた。同社は2月初めに発表した構造改革の追加措置に、不採算7ブランドの廃止、約450店舗の閉店とともに約100人の希望退職を盛り込んだ。
前回は昨年9月で、200人規模の募集に対して1.5倍近い294人の応募があった。今回も募集人数より2割以上多い125人が応じた。
同じくアパレルでは三陽商会が2018年以来(250人募集)の希望退職者募集に踏み切った。募集150人程度に対して180人が応募した。同社は2015年に英国発の世界的ブランド「バーバリー」とのライセンス契約終了後、経営不振が続いているが、コロナ禍で一層苦境に立っている。
ジーンズを中心とするカジュアル衣料品販売チェーンのライトオンでも応募が47人と募集人数の40人程度を2割近くオーバーした。
現時点で今年最多の約1150人の募集を発表したのはJT。内訳は正社員が約1000人、再雇用社員などのシニア社員が約150人。日本市場を含むたばこ事業の本社機能をスイス・ジュネーブに2022年1月に集約・統合し、国内では九州地区にある工場(子会社の拠点を含む)を22年3月末に廃止するなどのリストラ策の実施に伴う。
コロナ禍の影響を最も深刻に受けている業界の代表格といえば、外食だ。今年に入り、居酒屋「備長扇屋」「日本橋 紅とん」などで知られるヴィア・ホールディングス(HD)、居酒屋チェーンの大庄の加盟店として「庄や」「日本海庄や」などを埼玉県でフランチャイズ展開するかんなん丸が希望退職者を募った。
すでに触れたアパレル関連の3社とは反対に、ヴィア・HD、かんなん丸はいずれも応募が募集人数に1割以上届かなかった。
近鉄グループホールディングスはコロナ禍による急速な事業収支の悪化に対応し、傘下の近畿日本鉄道(近鉄)で600人を削減する。その一環として新入社員の採用抑制、グループ内外への出向と合わせ、45歳以上を対象に早期退職(募集人数は定めず)を3月中に実施した。新型コロナを受け、早期退職を募る動きは大手私鉄で初めてと見られる。
名村造船所は、傘下の佐世保重工業(長崎県佐世保市)における新造船事業の休止(2022年1月)に伴う250人の希望退職に取り組む。新型コロナ感染拡大で世界的に海上輸送需要が落ち込み、受注環境が一段と悪化。艦艇修繕船事業への配置転換や名村造船所への出向・転籍を進めるが、全員の再配置先を確保するのは困難として5月に希望退職者を募る。
製靴大手のリーガルコーポレーション、映像大手のIMAGICA GROUP、合成ゴム大手のJSRも募集規模は100人に及んだ。リーガルはコロナ禍を契機とする在宅勤務の拡大などで主力のビジネスシューズ需要が大きく落ち込んだ。
2020年に希望退職者募集を発表した上場企業は少なくとも93社を数え、前年の2.6倍に急増した。そのうちの60社近くはコロナ感染の影響が拡大した7月以降の年後半に集中したが、コロナ禍の出口が見えない状況下、今年も昨年来のハイペースで推移している。
◎2021年1~3月に希望退職者募集の計画を発表した上場企業
企業名 | 募集人数(期間)、応募人数など | |
3月 | 三ツ知 | 定めず(4月19日~5月14日) |
五洋インテックス | 10人(3月16日~31日) | |
JSR | 100人程度(4月19日~30日) | |
フォスター電機 | 60人程度(3月8日~31日) | |
2月 | 近鉄グループホールディングス | 定めず、傘下の近畿日本鉄道で(3月1日~24日) |
ベルトラ | 約25人(2月18日~24日)→24人応募 | |
リーガルコーポレーション | 100人程度(3月8日~19日)→95人応募 | |
名村造船所 | 250人(5月6日~21日) | |
JT | 1150人程度(2022年3月末に退職) | |
ライトオン | 40人程度(3月1日~16日)→47人応募 | |
日本金銭機械 | 60人程度(3月8日~19日)→60人応募 | |
ポプラ | 約50人(3月1日~19日)→62人応募 | |
ワールド | 約100人(3月9日~19日)→125人応募 | |
エンプラス | 定めず(2月16日~3月5日)→49人応募 | |
1月 | 東京コスモス電機 | 30人程度(3月1日~12日)→29人応募 |
佐鳥電機 | 30人程度(3月15日~31日) | |
IMAGICA GROUP | 100人程度(本体10人、子会社90人)→105人応募 | |
三陽商会 | 150人程度(2月15日~3月5日)→180人応募 | |
ヴィア・ホールディングス | 約50人(2月15日~25日)→42人応募 | |
かんなん丸 | 80人程度(3月1日~10日)→68人応募 | |
シャルレ | 定めず(1月13日~29日)→8人応募 |
文:M&A Online編集部
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希望退職者の募集結果についての発表が連日続いている。今年に入って2カ月余りだが、その数は上場企業だけですでに20社近い。応募者が最多だったのは旅行大手の近畿日本ツーリストなどを傘下に持つKNT-CTホールディングスの1376人で、LIXILの965人、オリンパスの844人などが次ぐ。