50代以上の人なら誰でも知っているカセットテープのトップブランドだった「マクセル」。カセットテープは今も使われているが、最盛期に用いられた音楽録音用としてはDAT(デジタルオーディオテープ)やMD(ミニディスク)、初代「iPod」で採用されたハードディスク(HDD)、フラッシュメモリーと、次々に登場する新メディアに主役を奪われた。カセットテープの凋落後、マクセルは波乱万丈の歴史を刻むことになる。

「最高性能の乾電池」を目指して

マクセルホールディングス(HD)<6810>の前身は日東電気工業(現・日東電工<6988>)の乾電池・磁気テープ部門だった。1961年に同部門が分離独立し、 「マクセル電気工業」が産声を上げる。マクセルが頭角を現したのは乾電池だった。1963年に国内で初めて長寿命のアルカリ乾電池の生産を始める。

日東電気工業時代から、電池技術には定評があった。そもそも社名のマクセル(MAXELL)は「Maximum Capacity Dry Cell」(最高性能の乾電池)が由来という。この高い技術力を評価した日立製作所<6501>が1964年に同社を子会社化し、「日立マクセル」に社名変更する。

社名の由来となった乾電池は今も健在だ(同社ホームページ

もともと母体の日東電気工業が日立系列だったこともあり、事実上「孫会社」から「子会社」への昇格だった。この「日立マクセル」時代は2017年まで、実に半世紀以上も続く。マクセルの歴史は、そのほとんどが日立グループの一員としてのものといえる。

そして「マクセル」の名を、広く知らしめるきっかけとなったのが、カセットテープの量産だった。いわゆる「カセットテープ」はオランダの電機メーカー・フィリップスが、フェライトを素材として1962年に開発したオーディオ用磁気記録テープ媒体の「コンパクトカセット」規格だ。