王子ホールディングス<3861>が海外企業のM&Aに力を入れている。2010年以降の買収企業は主なものだけでも7件に達する。こうしたM&Aに伴い海外売上高比率は徐々に高まっており、2010年ごろに5%程度だったのが現在は30%ほどにまでになった。
2018年5月の決算発表では、海外事業について「M&Aなどによる新規拠点の獲得を進める」との方針を示した。さらに王子ホールディングスの矢嶋進社長はマスコミのインタビューに「海外売上高比率を5割に高めたい」と語っており、ベトナムやインドネシア、インドなどの市場開拓に積極的に取り組む姿勢を鮮明にしている。
クロスボーダー(海外企業のM&A)が同社の当面のキーワードになりそうだ。
洋紙産業の草分け
王子ホールディングスは1873年に渋沢栄一が「抄紙会社」を設立したのが始まり。同時にこれは日本の洋紙産業の始まりも意味する。2年後の1875年に東京府下王子村に工場を完成し、破布を原料に抄造(原料をすいて作る製紙法)を始めた。
1893年に創業の地である王子村から名前を取り、商号を「王子製紙」に改称。1933年には富士製紙、樺太工業を合併し、洋紙生産のシェアは80%にまで高まった。
1949年には過度経済力集中排除法により苫小牧製紙(後に王子製紙)、本州製紙、十條製紙(後に日本製紙)の3社に分割された。
その後、北日本製紙、日本パルプ工業、東洋パルプを合併し、企業規模を拡大していった。1993年には高級紙に強い神崎製紙と合併し、1996年に板紙に強い本州製紙と合併。さらに2004年には段ボール業界第3位だった森紙業グループ各社を傘下に収め、現在の体制を整えた。
そして2010年からはクロスボーダーに大きく舵を切った。当時は洋紙の需要が減少し、国内での競争が激しくなっていた時期で、海外に活路を求めてのチャレンジだった。
年 | 沿革と主なM&A |
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1873 | 渋沢栄一により「抄紙会社」設立、日本の洋紙産業の始まり |
1875 | 東京府下王子村に工場完成、破布を原料に抄造開始 |
1876 | 商号を「製紙会社」と変更 |
1893 | 創業地の名を冠し、商号を「王子製紙」と改称 |
1933 | 富士製紙、樺太工業を合併、全国洋紙生産高の80%を生産 |
1949 | 苫小牧製紙(後に王子製紙)、本州製紙、十條製紙(後に日本製紙)3社に分割 |
1960 | 商号を「王子製紙株式会社」と変更 |
1970 | 北日本製紙株式会社と合併 |
1979 | 日本パルプ工業株式会社と合併 |
1989 | 東洋パルプ株式会社と合併 |
1993 | 神崎製紙株式会社と合併し、商号を「新王子製紙」に変更 |
1996 | 本州製紙株式会社と合併し、商号を「王子製紙」に変更 |
2004 | 段ボール業界第3位(生産量)の森紙業グループ各社の株式を取得 |
2010 | マレーシアの板紙・段ボールメーカーの持ち株会社Paperbox Holdings Ltd. の株式を取得 |
2011 | マレーシアの段ボール製造販売大手の持株会社であるHPI Resources Bhd.の株式を取得 |
2012 | ブラジルの市販パルプメーカーの持ち株会社日伯紙パルプ資源開発の株式を取得 |
2012 | 純粋持株会社制に移行し、商号を「王子ホールディングス株式会社」と変更 |
2014 | パルプや板紙を手がけるニュージーランドのCarter Holt Harvey Pulp and Paper Ltdと関係会社の株式を取得 |
2016 | マレーシアの段ボールメーカーDazun社を買収 |
2016 | マレーシアの感熱紙・ノーカーボン紙加工・印刷会社TP社を買収 |
2017 | オーストラリアCardboard Cartons Pty Ltd社の段ボール加工事業を買収 |